足がつった時にすぐできる痛みを和らげるストレッチ
足がつってしまった時は、慌てずにゆっくりと筋肉を伸ばすことが最も効果的です。筋肉が異常に収縮してしまっている状態なので、その反対の動き、つまり筋肉を優しく伸ばしてあげることで、痙攣と痛みを和らげることができます。
【ふくらはぎがつった場合の基本ストレッチ】
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脚をまっすぐ伸ばす
まずは痛む方の脚のひざを、できるだけまっすぐに伸ばします。ひざが曲がっていると、ふくらはぎの筋肉が十分に伸びません。 -
つま先を手前に引く
手を伸ばし、足の指の付け根あたりを掴みます。つま先だけを引くのではなく、足の裏全体を反らせるイメージです。そして、ゆっくりと自分の体の方へ引き寄せます。 -
じっくりと伸ばす
ふくらはぎの筋肉やアキレス腱が「痛気持ちいい」と感じる程度で止め、20~30秒ほどその状態を保ちます。
**ストレッチの重要なポイント**
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反動をつけない
グイグイと勢いよく引っ張ると、筋肉の繊維を傷めてしまう可能性があります。「じわーっ」と、ゆっくり伸ばすことを意識しましょう。 -
呼吸を止めない
痛みがあると無意識に息を止めてしまいがちです。ゆっくりと息を吐きながら行うと、筋肉の緊張がほぐれやすくなります。 -
タオルを活用する
つま先に手が届かない場合は、決して無理をしないでください。タオルを足先に引っ掛けて、タオルの両端を引っ張ることで、安全かつ効果的にストレッチができます。
痛みが落ち着いたら、蒸しタオルなどでつった部分を温めると、血行が良くなり筋肉の回復を助けてくれます。
再発を防ぐための効果的な水分・ミネラル(マグネシウム等)補給法
足のつりは、体内の水分やミネラルのバランスが崩れることで起こりやすくなります。筋肉が正常に伸び縮みするためには、これらの栄養素が欠かせません。日頃から意識的に補給することが、何よりの予防になります。
【水分補給のコツ】
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飲むタイミングを意識する
喉が渇いたと感じる前に、こまめに飲むのが理想です。特に、就寝前、起床後、入浴前後、運動前後は意識して水分を摂りましょう。就寝前のコップ一杯の水は、睡眠中の脱水を防ぐために非常に効果的です。 -
適切な飲み物を選ぶ
基本は水やお茶(カフェインの少ない麦茶など)がおすすめです。運動後など汗を多くかいた後は、ミネラルも同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液もうまく活用しましょう。ただし、糖尿病の方や血糖値が気になる方は、糖分の多いスポーツドリンクの飲み過ぎには注意が必要です。
【積極的に摂りたいミネラルと食品】
筋肉の収縮・弛緩のバランスを保つためには、特定のミネラルをバランス良く摂取することが大切です。
| ミネラルの種類 | 主な働き | 多く含まれる食品の例 |
|---|---|---|
| マグネシウム | 筋肉を緩める(弛緩)働きや、神経伝達を助ける | ナッツ類、大豆製品(豆腐、納豆)、海藻類(わかめ、ひじき)、ほうれん草 |
| カルシウム | 筋肉を縮める(収縮)働きや、神経の興奮を調整する | 牛乳・乳製品、小魚、小松菜、ごま |
| カリウム | 筋肉や神経の働きを正常に保ち、余分な塩分を排出する | バナナ、アボカド、ほうれん草、里芋 |
これらの栄養素を日々の食事にバランス良く取り入れることで、足のつりにくい体づくりを目指していきましょう。
医師が推奨する就寝前の簡単予防ストレッチとマッサージ
特に夜間に足がつりやすい方は、就寝前のひと工夫が効果的です。日中にたまった筋肉の疲れをほぐし、血行を良くしておくことで、睡眠中のこむら返りを予防できます。リラックス効果もあるので、質の良い睡眠にもつながります。
【就寝前のおすすめケア】
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ふくらはぎのストレッチ
壁の前に立ち、両手を壁につきます。片方の足を一歩後ろに引き、かかとを床につけたまま、前の足のひざをゆっくり曲げます。後ろ足のふくらはぎが心地よく伸びるのを感じながら、20~30秒キープしましょう。左右の足、それぞれ行ってください。 -
足首回し
椅子に座るか、床に座って、片方の足首をゆっくり大きく回します。右回り、左回り、それぞれ10回ずつ行いましょう。足先の血行が良くなります。 -
ふくらはぎのマッサージ
お風呂上がりなど、体が温まっている時に行うのがおすすめです。手のひら全体で、足首からひざ裏に向かって、ふくらはぎを優しくさすり上げます。痛気持ちいいくらいの強さで行いましょう。
【就寝前の予防習慣チェックリスト】
ぜひ、今夜から試してみてください。
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かって体を温めたか
- 就寝前にコップ一杯の水分を補給したか
- 簡単なストレッチやマッサージで筋肉をほぐしたか
- エアコンの風が直接足に当たらないようにしたか
- レッグウォーマーなどで足元を冷やさない工夫をしたか
毎日すべて行うのが難しくても、できることから一つずつ習慣にすることが大切です。
足のつりに効果が期待できる市販薬・漢方薬の選び方と注意点
ストレッチや生活習慣の改善を試みても、頻繁に足がつってつらい場合には、市販薬や漢方薬を試してみるのも一つの方法です。
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漢方薬「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」
筋肉の異常な緊張を和らげる働きがあり、こむら返りの急な痛みに対して用いられる漢方薬として知られています。急な痛みが起きた際に用いられることが多く、「つってしまった時」や「つりそうな予感がする時」に頓服(とんぷく:症状がある時だけ飲むこと)として使用するのが一般的です。 -
栄養補助「マグネシウム製剤」
筋肉の働きをサポートするマグネシウムを補う薬やサプリメントです。日頃から不足しがちな方や、便秘気味の方にも適している場合があります。
【使用上の注意点】
これらの薬は有効ですが、注意も必要です。特に芍薬甘草湯は、長期的に飲み続けると、むくみや高血圧、低カリウム血症といった副作用(偽アルドステロン症)を起こすことがあります。必ず用法・用量を守り、漫然と使い続けないようにしましょう。
市販薬を試しても症状が改善しない場合、特に**「重度の不眠」**を伴う場合は注意が必要です。例えば、寝つきが非常に悪い、夜中に何度も目が覚めてしまう、全く熟睡した感じがしない、といった症状です。
このようなケースでは、単なる筋肉やミネラルの問題だけでなく、筋肉に指令を送る**「末梢神経の過剰な興奮」**が背景にある可能性も考えられます。ごく稀ではありますが、神経系に影響が及ぶ特殊な状態が隠れていることもあり、専門的な検査で睡眠の状態を詳しく調べる必要があるかもしれません。
「たかが足のつり」と自己判断を続けずに、生活に支障が出るほどの症状がある場合は、一度かかりつけ医にご相談ください。
放置は危険?病気のサインと病院受診の適切なタイミング
多くの方が経験する足のつり。「こむら返り」とも呼ばれ、睡眠中や運動中に突然の激痛に襲われると本当につらいですよね。
ほとんどの場合は、水分不足や筋肉疲労による一時的な筋肉のけいれんです。
しかし、その背後に思わぬ病気が隠れている可能性もゼロではありません。
「たかが足のつり」と軽く考えずに、ご自身の体が出しているサインにしっかりと耳を傾けてみましょう。
ここでは、糖尿病専門医の視点から、注意すべき病気のサインや、病院を受診する適切なタイミングについて一緒に学んでいきましょう。

足のつりがサインとなる危険な病気(糖尿病・動脈硬化・脊柱管狭窄症など)
もし、足のつりが頻繁に起こる、だんだんひどくなるという場合は、それは体からのSOSサインかもしれません。
特に、生活習慣病や、神経・血管の病気が原因となっていることがあります。
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糖尿病
糖尿病専門医として、患者さんから「最近よく足がつる」と伺うと、特に注意深く診察します。血糖値が高い状態が続くと、2つの大きな問題が起こりやすくなります。
一つは「糖尿病神経障害」です。高血糖は手足の末梢神経にダメージを与え、神経が誤った信号を筋肉に送ってしまうことがあります。その結果、筋肉が異常に収縮し、足がつりやすくなるのです。
もう一つは「血流障害」です。高血糖は動脈硬化を進行させ、足先の細い血管まで血液が届きにくくなります。筋肉に十分な酸素や栄養が供給されず、老廃物が溜まることで、けいれんが起こりやすくなります。 -
血管(血流)の障害が原因の病気
足の血管が細くなったり詰まったりして血流が悪くなる病気でも、足のつりは起こります。
| 病名 | 特徴 |
|---|---|
| 閉塞性動脈硬化症 | 足の血管の動脈硬化が進み、血流が著しく悪くなる病気です。歩くと足が痛くなり、少し休むと楽になる「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」という症状が特徴です。 |
| 下肢静脈瘤 | 足の静脈にある弁の働きが悪くなり、血液が逆流して溜まってしまう病気です。足のだるさやむくみ、血管がこぶのように浮き出て見えることがあります。 |
- 神経や骨の異常が原因の病気
腰から足につながる神経が、骨などによって圧迫されることが原因で足のつりが起こることもあります。
| 病名 | 特徴 |
|---|---|
| 脊柱管狭窄症 | 加齢などが原因で、背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫される病気です。 |
| 椎間板ヘルニア | 背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が飛び出し、神経を圧迫する病気です。 |
その他、甲状腺ホルモンの乱れ(甲状腺機能低下症など)や、腎臓病・肝臓病によるミネラルバランスの異常が原因となることもあります。
飲んでいる薬が原因?副作用で足がつる可能性のある薬剤一覧
病気の治療のために飲んでいるお薬が、副作用として足のつりを引き起こすことがあります。
もし、新しい薬を飲み始めてから足がつりやすくなったと感じる場合は、そのお薬が関係しているかもしれません。
ただし、ご自身の判断でお薬をやめてしまうのは大変危険です。
治療に不可欠なお薬も多くありますので、必ず処方した医師や薬剤師に相談してください。
足のつりを起こす可能性のあるお薬には、以下のようなものがあります。
| 薬の種類 | 具体的な薬剤の例と作用 |
|---|---|
| 高血圧の薬(降圧薬) | 利尿薬は、体内の水分と一緒にミネラルを排出するため、筋肉のけいれんが起こりやすくなります。 |
| コレステロールの薬 | スタチン系の薬剤などが、まれに筋肉に影響を与えることがあります。 |
| 気管支喘息の薬 | 一部の気管支拡張薬は、交感神経に作用して筋肉のけいれんを誘発することがあります。 |
| その他 | 痛風の薬、甲状腺の薬、一部の抗がん剤やホルモン剤などでも報告があります。 |
これらの薬が原因の場合、薬の種類を変更したり、漢方薬を併用したりすることで症状が改善することもあります。
気になる症状があれば、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。
こんな症状は要注意!すぐに病院へ行くべき5つのサイン
「いつ病院に行けばいいの?」と迷う方も多いでしょう。
以下のようなサインが見られる場合は、単なる足のつりではない可能性が考えられます。
一度、医療機関を受診することをおすすめします。
【受診を検討すべきサイン・チェックリスト】
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[ ] 頻度が急に増えた、または毎日のように起こる
生活習慣は変わらないのに、急に頻度が増えたり、毎晩のように繰り返したりする場合は、体の中で何らかの変化が起きているサインかもしれません。 -
[ ] 痛みが非常に強い、またはけいれんが長時間(数分以上)続く
我慢できないほどの激痛が走ったり、筋肉が硬直した状態がなかなか元に戻らなかったりする場合も注意が必要です。 -
[ ] 足のしびれ、むくみ、冷たさ、色の変化を伴う
足のつりと一緒に、しびれや感覚の鈍さ、左右で足の太さや温度が違うなどの症状がある場合は、血流の障害や神経の障害が疑われます。 -
[ ] 歩くと足が痛み、休むと楽になる
これは「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれ、閉塞性動脈硬化症や脊柱管狭窄症の典型的な症状です。 -
[ ] 筋肉のピクつきや、原因不明のひどい不眠を伴う
足のつりに加え、意思とは関係なくまぶたや手足の筋肉がピクピクと動く(線維束性収縮)、あるいは全く熟睡できないほどの重度の不眠が続く場合、特に注意が必要です。
これは、筋肉そのものの問題ではなく、筋肉に指令を送る「末梢神経」が過剰に興奮しているサインかもしれません。ごく稀ではありますが、このような症状の背景には、専門的な検査や治療が必要な神経系の病気(末梢神経過興奮症候群など)が隠れていることがあります。
これらのサインに一つでも当てはまる場合は、放置せずに、まずはかかりつけ医や内科などの医療機関にご相談ください。
原因を突き止め、適切な治療につなげていきましょう。
まとめ
今回は、多くの方が経験する「足のつり」について、その原因からご自身でできる対処法、日々の予防習慣まで詳しく解説しました。
突然の激痛はつらいものですが、その多くは水分・ミネラル不足や筋肉の疲労、冷えが原因です。まずは、就寝前のコップ一杯の水や、お風呂上がりの簡単なストレッチなど、今日からできるセルフケアを試してみてください。
しかし、「たかが足のつり」と軽視できないケースもあります。もし頻繁に繰り返す、痛みが非常に強い、しびれやむくみを伴うといった場合は、糖尿病や血管の病気など、体が発する重要なサインかもしれません。
少しでも不安な症状があれば、我慢せずに専門医へ相談し、安心して毎日を過ごせるようにしましょう。
参考文献
- Cakar MM, Maharramov E, Gul AC, Yildiz FG, Tan E, Tezer FI. Video-Polysomnography in Peripheral Nerve Hyperexcitability: Clues to Morvan Syndrome in Two Patients and Literature Review. Journal of clinical neurophysiology 43, no. 2 (2026): 185-188.


