「最近、妙に喉が渇く」「しっかり寝ても疲れが抜けない」。そんな日常の些細な不調を、年齢や疲れのせいだと見過ごしていませんか?そのサインは、気づかぬうちに体を蝕む「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」、糖尿病の始まりかもしれません。
糖尿病は初期症状がほとんどなく、ある日突然、深刻な合併症を引き起こす怖い病気です。「自分は太っていないから大丈夫」という考えも危険で、ある調査では肥満でない人のうち15%以上が糖尿病だったという報告もあります。
この記事では、あなたの身体が発しているかもしれない12のSOSサインを詳しく解説します。手遅れになる前に、ご自身の健康状態と向き合ってみませんか?
あなたは大丈夫?糖尿病の初期症状セルフチェックリスト12
「最近、なんだか疲れがとれない」「やけに喉が渇いて、水分ばかり摂っている」。 そんな日常の些細な体調の変化は、もしかしたら糖尿病が始まっているサインかもしれません。
糖尿病は、初期の段階では自覚できる症状がほとんどないことも多く、「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれます。 気づかないうちに身体の中で静かに進行し、ある日突然、深刻な合併症を引き起こす可能性がある怖い病気です。
これから挙げる12のチェックリストは、あなたの身体が発している大切なSOSサインかもしれません。 ご自身の身体と丁寧に向き合うきっかけとして、一つひとつ一緒に確認していきましょう。

喉が異常に渇き、水分をたくさん摂ってしまう(多飲)
「いくら飲んでも喉の渇きが潤わない」「夜中に喉がカラカラで目が覚めてしまう」。 このような強い喉の渇きは、「多飲(たいん)」と呼ばれ、糖尿病の代表的なサインの一つです。
この症状は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなることで起こります。 高血糖の状態になると、身体は腎臓から余分な糖を尿として排出しようと働きます。 その際、糖は水分と一緒に排出される性質があるため、体内の水分が大量に失われ、身体は脱水状態に陥ります。 その結果、脳が「水分が足りない」という危険信号を出し、強い喉の渇きとして感じるのです。
【こんなサインに注意】
- 1日に2リットル以上の水分を摂っても、まだ喉が渇く
- 以前と比べて、明らかに水分を摂る量が増えた
- 水やお茶だけでなく、甘いジュースやスポーツドリンクを常に飲んでしまう
特に注意が必要なのは、糖分を多く含む清涼飲料水で水分補給をしてしまうことです。 一時的に喉は潤っても、さらに血糖値が上昇し、より一層喉が渇くという悪循環に陥ってしまいます。 これは「ペットボトル症候群」とも呼ばれる危険な状態です。 思い当たる点があれば、決して放置せず、一度専門家にご相談ください。
トイレの回数が増え、尿の量も多い(頻尿・多尿)
喉の渇き(多飲)とセットで現れやすいのが、トイレの回数が増える「頻尿(ひんにょう)」と、1回の尿量が増える「多尿(たにょう)」です。 たくさん水分を摂るからトイレが近くなるのは当然ですが、糖尿病の場合はそれだけが原因ではありません。
高血糖の状態が続くと、腎臓は血液中から溢れ出たブドウ糖を尿に混ぜて排泄します。 このとき、ブドウ糖はスポンジのように水分を引き連れて排出されるため、尿全体の量が増えてしまいます。 この現象を「浸透圧利尿(しんとうあつりにょう)」と呼びます。 身体が血糖値を下げようと必死に働いている結果、尿の量が増えてしまうのです。
【こんなサインに注意】
- 日中のトイレの回数が8回以上になった
- 夜中に2回以上トイレのために起きるようになった(夜間頻尿)
- 尿意を感じてからトイレまで我慢するのが難しくなった
- 会議や映画の途中でトイレに行きたくなることが増え、困っている
特に、夜中に何度もトイレに起きるようになると、睡眠の質が著しく低下します。 その結果、日中の強い眠気や倦怠感にもつながり、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。 生活に影響が出るほどの頻尿・多尿は、身体からの重要なメッセージです。見過ごさないようにしましょう。
食べているのに体重が減っていく(体重減少)
「食事の量は変わらない、むしろ以前より食べているのに、なぜか体重が減っていく」。 これは一見すると嬉しい変化に思えるかもしれませんが、糖尿病が関係している場合、非常に注意が必要なサインです。
健康な身体では、食事から摂った糖分は「インスリン」というホルモンの働きによって、細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。 しかし、糖尿病でインスリンの働きが不足すると、細胞は血液中にあふれている糖分をうまくエネルギーに変えられなくなります。 エネルギー不足に陥った身体は、生きるために筋肉や脂肪を分解して、代わりのエネルギー源として使い始めます。 その結果、食事をしっかり摂っていても、体重が減少してしまうのです。
【こんなサインに注意】
- ダイエットをしていないのに、この数ヶ月で2〜3kg以上体重が減った
- 食欲は旺盛なのに、ベルトの穴が一つずれた
- 周囲から「痩せた?」と指摘されることが増えた
近年の研究では、肥満ではない、あるいは痩せ型の人でも、気づかないうちに糖尿病やその一歩手前の状態になっているケースが決して少なくないことがわかっています。 例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を持つ非肥満の方のうち、糖尿病の有病率は15.6%、その予備群である前糖尿病は22.9%にも上るという報告もあります。 「自分は太っていないから大丈夫」という考えは禁物です。意図しない体重減少は、身体のエネルギー代謝に異常が起きているサインと考え、早めに医療機関を受診しましょう。
全身がだるく、常に疲れを感じる(倦怠感)
「しっかり寝ているはずなのに、朝から身体が重い」「少し動いただけですぐに息が切れてしまう」。 このような原因がはっきりしない倦怠感も、糖尿病の初期に見られることがあります。
この疲れやすさの主な原因は、細胞レベルでのエネルギー不足です。 インスリンの働きが悪くなると、血液中にはエネルギー源であるブドウ糖がたくさんあるにもかかわらず、本当にエネルギーを必要としている筋肉や脳などの細胞にうまく届けることができません。 つまり、ガソリンは満タンなのにエンジンに供給されない車のように、身体全体がガス欠のような状態になってしまうのです。 また、頻尿による睡眠不足や、脱水傾向になることも、倦怠感をさらに悪化させる一因となります。
【こんなサインに注意】
- 十分な睡眠時間を確保しても、日中に抗えないほどの眠気がある
- 以前は楽にできていた家事や仕事が、ひどく億劫に感じる
- 階段を上るだけで動悸や息切れがするようになった
- 何事にもやる気が出ず、気分が落ち込みがちになる
倦怠感は様々な原因で起こるため、すぐに糖尿病と結びつけて考えにくいかもしれません。 しかし、喉の渇きや頻尿、体重減少など、他の症状と合わせて見られる場合は、血糖値の問題が隠れている可能性を疑うことが大切です。
手足の先がしびれたり、ピリピリしたりする(神経障害)
手足の指先が「ジンジン」「ピリピリ」としびれる、あるいは感覚が鈍くなる。 これは、糖尿病の三大合併症の一つである「糖尿病性神経障害」の初期サインかもしれません。
高血糖の状態が長く続くと、血液中にあふれた余分な糖分が、身体の隅々まで張り巡らされた神経細胞にダメージを与え、機能障害を引き起こします。 特に影響を受けやすいのが、心臓から最も遠い場所にある、足の指先や手の指先の末梢神経です。 そのため、症状は足先から始まることが多く、徐々に上に向かって広がっていきます。
【こんなサインに注意】
- 手足の先に、薄い手袋や靴下を一枚まとっているような違和感がある
- 足の裏に砂利を踏んでいるような、あるいは紙が貼りついているような感じがする
- 正座をした後のようなしびれが、何もしていないのに起こる
- 夜になると、足がほてったり、逆に氷のように冷たくなったりする
この神経障害で最も怖いのは、痛みや熱さに対する感覚が鈍くなることです。 足の感覚が鈍ると、靴擦れや小さな切り傷、やけどなどに気づかず、そこから細菌が侵入して潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)といった、足を切断することにもなりかねない深刻な状態につながる危険性があります。 少しでも気になるしびれや違和感があれば、決して放置せずにご相談ください。
目がかすんだり、視力が落ちたりする(網膜症の初期)
「最近、視界がぼんやりする」「メガネの度が急に合わなくなった気がする」。 このような目の不調も、糖尿病が原因で起こることがあります。
これには、主に二つの原因が考えられます。 一つは、血糖値の急激な変動による一時的な視力変化です。 血糖値が大きく変動すると、目の中にあるレンズの役割をする「水晶体」の厚みが変わってしまい、ピントが合いにくくなることがあります。 もう一つは、より深刻な「糖尿病網膜症」の始まりです。 これは三大合併症の一つで、高血糖によって目の奥にある網膜の非常に細い血管が傷つき、出血したり詰まったりして、視力低下を引き起こす病気です。 初期段階では自覚症状がほとんどなく、静かに進行していくため、気づいた時にはかなり進行しているケースも少なくありません。
【こんなサインに注意】
- 視界がかすんで、霧がかかったように見える
- 文字や物が二重に見えることがある
- 明るい場所でまぶしさを強く感じるようになった
- 飛蚊症(ひぶんしょう:黒い点や虫のようなものが飛んで見える症状)が悪化した
糖尿病網膜症は、日本の成人における失明原因の上位を占める非常に怖い病気です。 しかし、早期に発見し、適切な血糖コントロールと治療を行えば、進行を食い止め、視力を守ることが可能です。 目の見え方に少しでも変化を感じたら、内科だけでなく、必ず眼科も受診するようにしてください。
皮膚が乾燥してかゆい、できものが治りにくい
最近、肌がカサカサしてかゆみが続く、あるいは「おでき」や「にきび」のようなものができては治りにくい、と感じることはありませんか。 こうした一見ありふれた皮膚トラブルも、高血糖が影響している可能性があります。
高血糖による多尿は、全身の水分不足を引き起こします。 皮膚の水分も当然失われるため、皮膚のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなります。 また、外部からの刺激に敏感になり、かゆみを感じやすくなるのです。 さらに、血糖値が高い状態では、身体の免疫機能が全般的に低下します。 そのため、皮膚の細菌に対する抵抗力が弱まり、毛穴に細菌が感染して起こる毛嚢炎(もうのうえん)などを起こしやすくなります。
【こんなサインに注意】
- 全身、特にすねや背中などが乾燥して、粉をふいたようにかゆい
- 保湿クリームを丁寧に塗っても、すぐにカサカサになってしまう
- 身体のあちこちに、おできが繰り返しできる
- 陰部のかゆみが続く(カンジダ症の可能性もあります)
単なる乾燥肌や加齢によるものと自己判断せず、長引く皮膚のかゆみや繰り返す皮膚トラブルがある場合は、糖尿病の可能性も視野に入れてみましょう。
傷が治りにくくなった
「以前はすぐに治ったはずの小さな切り傷が、いつまでもジクジクしている」「ちょっとした擦り傷が化膿しやすくなった」。 このような傷の治りの遅れは、糖尿病のサインとして見過ごすわけにはいきません。
傷が治りにくくなる主な理由は2つあります。
- 免疫機能の低下 高血糖の状態では、細菌と戦う白血球などの免疫細胞の働きが鈍くなります。そのため、傷口から侵入した細菌をうまく撃退できず、感染を起こしやすくなったり、炎症が長引いたりします。
- 血行不良 糖尿病が進行すると、血管が硬くなる動脈硬化が進みやすくなります。特に手足の末梢の血流が悪くなると、傷を治すために必要な酸素や栄養素が傷口に十分に届かなくなり、細胞の修復が遅れてしまうのです。
【こんなサインに注意】
- 紙で切ったような小さな傷の治りが、明らかに遅い
- 靴擦れがなかなか治らず、いつまでも赤く腫れて痛む
- 傷口が化膿して、膿(うみ)が出ることが増えた
特に足の傷は、神経障害による感覚の鈍さも相まって気づきにくく、重症化しやすい傾向があります。 毎日お風呂に入る際などに、足の裏や指の間まで、傷や色の変化がないかチェックする習慣をつけることが非常に大切です。
感染症(歯周病、カンジダ症など)にかかりやすくなった
糖尿病になると、身体全体の免疫力が低下するため、様々な感染症にかかりやすくなります。 特定の感染症を何度も繰り返す場合は、その背景に高血糖が隠れているかもしれません。
血糖値が高い状態は、細菌や真菌(カビの一種)にとって、格好の栄養源となります。 そのため、体内での増殖が容易になります。 さらに、細菌を攻撃する白血球の機能も低下するため、一度感染するとなかなか治りにくく、重症化しやすいという特徴があります。
【注意すべき主な感染症】
- 歯周病 歯茎が腫れる、出血する、口臭が強くなるなどの症状があります。糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼし合うことが知られており、「糖尿病の6番目の合併症」とも呼ばれます。
- カンジダ症 尿中の糖分が増えることで、陰部でカンジダという真菌が増殖し、強いかゆみを引き起こします。女性に多いですが、男性でも起こりえます。
- 尿路感染症(膀胱炎など) 頻尿、排尿時の痛み、残尿感などの症状が出ます。尿に糖が含まれることで、膀胱内で細菌が繁殖しやすくなります。
- 皮膚感染症(水虫、おできなど) 治りにくく、繰り返しやすくなります。
これらの感染症を何度も繰り返す場合は、単にその病気の治療をするだけでなく、根本的な原因として糖尿病がないかを確認することが重要です。
空腹時に強い眠気を感じる
食後に眠くなるのは、血糖値の変動による生理的な現象で、誰にでもある程度は起こることです。 しかし、「食事を抜いた時」や「次の食事までの間」といった空腹時に、抗えないほどの強い眠気に襲われる場合、血糖値の乱れが関係している可能性があります。
これは「反応性低血糖」のサインかもしれません。 糖尿病の初期や糖尿病予備群の方では、食後の血糖値が急上昇しやすく、それを下げようとインスリンが過剰に分泌されてしまうことがあります。 その結果、次の食事の前には逆に血糖値が下がりすぎてしまうのです。 脳はブドウ糖を主なエネルギー源としているため、血糖値が下がりすぎると、脳の働きが低下し、強い眠気や集中力の低下、冷や汗、動悸といった症状が現れます。
【こんなサインに注意】
- 昼食前や夕食前など、お腹が空く時間帯に急に意識が遠のくような眠気に襲われる
- 眠気と同時に、冷や汗や動悸、手の震えなどを伴うことがある
- 何か甘いものを口にすると、症状が少し楽になる
空腹時の異常な眠気は、血糖コントロールが不安定になっている証拠です。 放置すると、運転中や仕事中に意識障害を起こすなど、危険な状態につながる可能性もあるため、気になる場合は必ず医師に相談してください。
集中力が続かない
「仕事中に、なんだか頭がボーッとしてしまう」「本を読んでいても、同じ行を何度も読み返してしまう」。 このような集中力の低下も、高血糖が原因で起こることがあります。
私たちの脳は、体重の約2%の重さしかないにもかかわらず、身体全体のエネルギーの約20%を消費する大食漢です。 そしてその主なエネルギー源がブドウ糖です。 しかし、糖尿病でインスリンの働きが悪いと、血液中にブドウ糖はたくさんあっても、脳細胞がそれをうまく取り込んでエネルギーとして利用できません。 その結果、脳がエネルギー不足に陥り、思考力や集中力、記憶力といった認知機能が低下してしまうのです。 また、血糖値が急激に上がったり下がったりすること自体が、脳の働きを不安定にさせ、集中力を妨げる原因にもなります。
【こんなサインに注意】
- 会議の内容がなかなか頭に入ってこない
- 簡単な計算ミスや物忘れが増えたと感じる
- 仕事や家事の段取りが悪くなり、時間がかかるようになった
- 頭にもやがかかったような感覚(ブレインフォグ)が続く
これらの症状は、疲れやストレス、加齢のせいだと思われがちです。 しかし、他の糖尿病のサインと合わせて見られる場合は、血糖値の影響を疑ってみる必要があります。
性機能の低下(EDなど)
性機能の低下、特に男性における勃起障害(ED)は、糖尿病の合併症として比較的早い段階から現れることがある症状です。 非常にデリケートな問題のため、誰にも相談できずに悩んでいる方も多いかもしれませんが、身体からの重要なサインです。
正常な性機能には、正常な神経と血管の働きが不可欠です。 高血糖は、この両方にダメージを与えてしまいます。
- 神経障害 勃起などに関わる自律神経が障害されると、脳からの興奮の指令がうまく伝わらなくなります。
- 血流障害(動脈硬化) 糖尿病は全身の血管の動脈硬化を促進します。陰茎の細い血管が硬くなり、血流が悪くなると、勃起に必要な血液を十分に送り込めなくなります。
【こんなサインに注意】
- 以前に比べて勃起しにくくなった、または維持できなくなった
- 性的な欲求自体が低下したと感じる
- (女性の場合)腟の潤いが不足する、オーガズムを感じにくい
ここまで12のサインを見てきましたが、これらの症状の現れ方は人によって様々です。 糖尿病は、その人の遺伝的な要因やこれまでの生活習慣が複雑に絡み合って発症するため、症状の出方にも個人差(異質性)があるのです。 チェックリストの全てに当てはまる人もいれば、一つか二つしか当てはまらない人もいます。
一つでも気になるサインがあれば、それはあなたの身体が送る大切なメッセージです。 一人で悩まず、ぜひ私たち専門家にご相談ください。 一緒に原因を探り、あなたに合った解決策を考えていきましょう。
「もしかして」と思ったら?受診から診断までの流れと費用
セルフチェックリストに当てはまる項目があり、ご不安な気持ちでいらっしゃるかもしれません。 しかし、「もしかして」とご自身の体の変化に気づけたことは、健康を守るための非常に大切な一歩です。 糖尿病は早期に発見し、適切な対応を始めることで、深刻な合併症を防ぎ、健やかな毎日を送り続けることができます。
ここでは、実際に医療機関を受診してから診断されるまでの具体的な流れ、検査の内容、そして気になる費用について詳しく解説していきます。 具体的な流れを知ることで、少しでも安心して次の一歩を踏み出せるよう、一緒に確認していきましょう。

まずは内科・糖尿病内科へ相談しよう
「どの病院に行けばいいのだろう?」と迷われたら、まずはお近くの内科、あるいは糖尿病や内分泌を専門とするクリニックへご相談ください。 もちろん、日頃からお世話になっているかかりつけの先生がいらっしゃる場合は、そちらで相談するのが一番です。
糖尿病内科などの専門クリニックでは、より詳しい検査や、糖尿病三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)のチェック、一人ひとりの生活に合わせたきめ細やかな治療法の提案が可能です。 特に、以下のようなサインが見られる場合は、早めの受診をご検討ください。
【受診を検討してほしい症状の例】
- 異常に喉が渇き、水分をたくさん飲む
- トイレの回数や尿の量が増えた(特に夜間)
- 食事量は変わらない、むしろ食べているのに体重が減ってきた
- 全身がだるく、疲れがとれない
- 手足がしびれる、ピリピリする
また、はっきりとした症状がなくても、健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の異常を指摘された方は、必ず医療機関を受診してください。 ご家族に糖尿病の方がいる方や、肥満気味な方も、一度ご相談いただくことをお勧めします。
「自分は太っていないから大丈夫」と思っていませんか?実は、その考えには注意が必要です。 最近の研究では、肥満ではない方でも、肝臓に脂肪がたまる「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」があると、糖尿病のリスクが高いことがわかっています。 ある大規模な調査では、肥満ではないNAFLDの方のうち、実に15.6%が糖尿病、22.9%がその手前の「前糖尿病(予備群)」の状態であったと報告されています。 つまり、体型だけでは判断できないのです。気になることがあれば、専門家と一緒に体の状態を確認することが大切です。
病院で行う主な検査(血糖値・HbA1c)の内容と目的
クリニックでは、主に血液検査で血糖の状態を調べ、糖尿病かどうかを判断します。 痛みを伴うような特別な検査は基本的にありませんのでご安心ください。主に行われるのは以下の検査です。
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血糖値検査
- 採血した「その時点」での血液中のブドウ糖の濃度を調べる検査です。
- 検査前の食事の状況によって、診断上の意味合いが変わります。
- 空腹時血糖値
- 10時間以上食事を摂らない状態で測定します。朝食前の血糖値の状態がわかります。
- 随時血糖値
- 食事の時間に関係なく測定します。食後など、血糖値が上がりやすいタイミングでの状態を把握できます。
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
- ブドウ糖の入った甘いサイダーのような液体を飲み、飲む前と飲んだ後の血糖値の変動を調べる精密検査です。
- 糖分を摂った後に、体がどれだけうまく血糖値を下げられるか(糖を処理する能力)がわかります。
- 食後の血糖値だけが異常に高くなる「かくれ糖尿病」の発見にも非常に役立ちます。
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HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)検査
- 過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均点を表す、非常に重要な指標です。
- 血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質に、ブドウ糖がどのくらいくっついているかを調べています。
- 血糖値検査が「その日のテストの点数」だとすると、HbA1cは「学期の成績表」のようなものです。
- この検査によって、検査当日だけの血糖値ではなく、普段の生活を含めた長期的な血糖コントロールの状態を把握することができます。
| 検査の種類 | わかること | 特徴 |
|---|---|---|
| 血糖値検査 | 採血したその時点での血糖値 | 検査前の食事の有無が結果に大きく影響する、「点」の評価 |
| HbA1c検査 | 過去1〜2ヶ月の平均的な血糖値 | 食事のタイミングに左右されず、普段の状態がわかる、「線」の評価 |
検査にかかる時間と費用の目安
受診を考える際、検査にかかる時間や費用も気になるところだと思います。あくまで一般的な目安ですが、参考にしてください。
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検査にかかる時間
- 診察と基本的な血液検査(血糖値・HbA1cなど)
- 受付から会計まで、全体で1時間〜1時間半程度を見込んでおくとよいでしょう。
- 採血そのものは数分で終わります。
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行う場合
- この検査は、ブドウ糖液を飲む前と飲んだ後に複数回(例:30分後、1時間後、2時間後)採血を行います。
- そのため、クリニックでの滞在時間は合計で2時間半〜3時間ほど必要になります。
- 検査を受ける日は、時間に十分な余裕を持ってお越しください。
- 診察と基本的な血液検査(血糖値・HbA1cなど)
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費用の目安(保険適用・3割負担の場合)
- 初診+血液検査(血糖値・HbA1cなど)+尿検査
- 3,000円〜5,000円程度
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を追加した場合
- 上記の金額に加えて、2,000円〜3,000円程度
- 初診+血液検査(血糖値・HbA1cなど)+尿検査
※上記はあくまで目安です。実施する検査項目や医療機関によって費用は異なります。 糖尿病の進行を放置してしまい、将来的に透析や失明などの合併症治療が必要になると、さらに大きな医療費がかかる可能性があります。 ご自身の健康状態を早期に把握することは、将来の健康を守るだけでなく、医療費負担を軽減する「健康への投資」とも言えるのです。
健康診断の結果の見方と受診すべき数値の基準
健康診断の結果は、ご自身の体から送られてきた大切なメッセージです。特に以下の項目に注目し、数値を確認してみましょう。
- 空腹時血糖値
- HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)
- 尿糖
これらの検査値がどの範囲にあるかで、現在の体の状態を大まかに把握できます。
| 検査項目 | 正常型 | 境界型(糖尿病予備群) | 糖尿病型(受診を強く推奨) |
|---|---|---|---|
| 空腹時血糖値 | 110 mg/dL 未満 | 110~125 mg/dL | 126 mg/dL 以上 |
| HbA1c | 5.6% 未満 | 5.6%~6.4% | 6.5% 以上 |
【結果の見方のポイント】
- 「糖尿病型」の場合
- この数値が出た場合は、糖尿病が強く疑われます。
- 症状がなくても、必ず内科・糖尿病内科を受診してください。
- 1回の検査だけでは診断が確定しないこともありますが、放置するのは非常に危険です。
- 「境界型」の場合
- 現時点では糖尿病ではありませんが、将来的に糖尿病に進行する可能性が非常に高い「予備群」の状態です。
- 「まだ病気じゃないから大丈夫」と安心せず、「生活習慣を見直す最後のチャンス」と捉えることが何より重要です。
- この段階で専門家に相談し、食事や運動について適切なアドバイスを受けることを強くおすすめします。
- 尿糖が(+)の場合
- 血糖値が160〜180mg/dL以上になると、腎臓が血液中から糖を再吸収しきれなくなり、尿に糖が漏れ出てきます。
- 尿糖が陽性だからといって必ずしも糖尿病とは限りませんが、体がSOSサインを出している可能性があります。精密検査のために受診しましょう。
健康診断の結果を「自分ごと」として受け止め、ご自身の体と向き合うきっかけにしてください。 結果について少しでも疑問や不安があれば、決して一人で抱え込まず、私たち専門家にお気軽にご相談ください。
糖尿病と診断された後の生活 Q&A
糖尿病と診断され、これからの生活、食事や仕事はどうなるのかと、大きな不安を感じていらっしゃるかもしれません。 しかし、どうぞご安心ください。適切な治療と日々の少しの工夫で、これまでと変わらず充実した毎日を送ることは十分に可能です。
糖尿病と一言で言っても、その原因や身体の状態、進行具合は一人ひとり全く異なります。 これは、遺伝的な要因やこれまでの生活習慣が複雑に絡み合って発症するためで、医学的には「異質性(いしつせい)」と呼ばれています。 だからこそ、近年では、個々の特性に合わせて治療法を最適化する「精密医療(プレシジョン・メディシン)」、つまりあなただけの「オーダーメイド治療」が何よりも重要視されているのです。
画一的な治療法ではなく、あなたの体質や生活スタイルに合った方法を、私たち専門家と一緒に見つけていきましょう。 ここでは、多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式で詳しく解説します。

食事制限は厳しい?外食やコンビニ食を楽しむコツ
「食事制限」と聞くと、食べる楽しみがすべて無くなってしまうように感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。 大切なのは「これを食べてはいけない」と考えることではなく、「何を」「どれだけ」「どのように食べるか」を賢く選択し、工夫することです。
基本は、栄養バランスの取れた食事を規則正しく摂ること。 これは、外食やコンビニ食が多くなりがちな方でも、選び方のコツさえ掴めば十分に実践できます。
外食・コンビニ食選びの3つのコツ
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「定食スタイル」を意識する 丼ものや麺類といった単品メニューは、糖質に偏りがちです。 「主食(ごはん)・主菜(肉・魚・大豆製品)・副菜(野菜)」がそろった定食を選びましょう。 コンビニでは、おにぎりやパンに、サラダチキン、ゆで卵、ほうれん草のおひたし、ひじきの煮物などを組み合わせるのがおすすめです。
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食物繊維を先に摂る「ベジタブルファースト」 食事の最初に、野菜や海藻、きのこ類など、食物繊維が豊富なものから食べ始めましょう。 食物繊維は、後から食べる糖質の吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇を防いでくれます。
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調理法をチェックする 「揚げる」「炒める」よりも、「焼く」「蒸す」「煮る」といった調理法のメニューを選びましょう。 余分な脂質やカロリーを抑えることができ、血糖コントロールに役立ちます。
| 場面 | おすすめの選び方の例 | 選び方を工夫したいメニューの例 |
|---|---|---|
| 外食時 | 焼き魚定食、野菜炒め定食、刺身定食、豚しゃぶサラダ定食 | カツ丼、ラーメンとチャーハンのセット、天ぷらそば、クリームパスタ |
| コンビニ | 幕の内弁当、もち麦おにぎり、サラダチキン、海藻サラダ、ゆで卵、おでん | 菓子パン、カップ麺、フライドチキン、あんまん、清涼飲料水 |
これらのコツはあくまで基本です。あなたにとって最適な食事内容は、年齢や活動量、合併症の有無によって異なります。 無理なく続けられるあなたに合った食事プランを、一緒に考えていきましょう。
運動はどのくらい必要?日常生活でできること
運動は、食事療法と並んで糖尿病治療の非常に重要な柱です。 運動によって、筋肉が血液中のブドウ糖をエネルギーとして直接使うため、血糖値が下がりやすくなります。 また、運動を続けることで、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の効きが良くなる効果も期待できます。
運動の目標
- 有酸素運動 ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳など。 息が少し弾むくらいの強さで、1回20分以上、週に合計150分(例:1回30分を週5日)が目標です。
- 筋力トレーニング(レジスタンス運動) スクワット、かかと落とし、腕立て伏せなど。 筋肉量を増やすことで、普段からブドウ糖を消費しやすい、燃費の良い体になります。 週に2〜3回、無理のない範囲で行いましょう。
まとまった運動時間が取れなくても、がっかりする必要はありません。 日常生活の中でこまめに体を動かす意識を持つことが、血糖コントロールの改善につながります。
【チェックリスト】日常生活でできる「ながら運動」
- [ ] エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使う
- [ ] 通勤時に一駅手前で降りて、早歩きをプラスする
- [ ] 買い物は少し遠くのスーパーまで歩いて行く
- [ ] テレビを見ながらその場で足踏みをする
- [ ] 歯磨きをしながら、かかとの上げ下げ運動をする
ただし、注意点もあります。 血糖値が極端に高い時や、進行した合併症がある場合は、運動が逆に体に負担をかけてしまうこともあります。 どのような運動が今のあなたに合っているか、必ず主治医に相談してから安全に始めましょう。
治療費はいくらかかる?利用できる公的支援制度
糖尿病と長く付き合っていく上で、治療にかかる経済的な負担はご心配な点だと思います。 治療費は、通院頻度や検査内容、処方されるお薬の種類によって個人差がありますが、主に以下のような費用がかかります。
- 診察料
- 検査料(血液検査、尿検査、合併症の検査など)
- 薬代(飲み薬やインスリン注射など)
- 在宅自己注射指導管理料(インスリン治療の場合)
- 自己血糖測定器の関連品(センサーや針など)
これらの費用負担を軽減するために、国が設けている様々な公的支援制度があります。 ご自身の状況に合わせて活用できるものがないか、ぜひ確認してみてください。
知っておきたい主な公的支援制度
| 制度の名称 | 内容 |
|---|---|
| 高額療養費制度 | 1か月の医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、その超えた金額が払い戻される制度です。 |
| 医療費控除 | 1年間に支払った医療費が一定額(原則10万円)を超える場合に、確定申告で所得税や住民税が軽減される制度です。 |
| 傷病手当金 | 病気やけがのために会社を休み、給与が十分に受けられない場合に、ご加入の健康保険から手当金が支給されます。 |
| 障害年金 | 糖尿病の合併症(腎症による人工透析など)によって、生活や仕事に著しい制限が生じた場合に受け取ることができます。 |
これらの制度は申請が必要なものがほとんどです。 詳しい内容や申請方法についてご不明な点があれば、クリニックの窓口や医療ソーシャルワーカー、ご加入の健康保険組合、お住まいの市区町村役場の担当窓口などにご相談ください。
家族や職場への伝え方と理解を得るポイント
病気のことを周囲にどう伝えるべきかは、非常にデリケートな問題で、悩まれる方も少なくありません。 一人で抱え込まず、信頼できる方に相談することは、精神的な負担を軽くするだけでなく、治療を続けていく上で大きな支えになります。
ご家族へ伝える時のポイント
- 病気について正しく知ってもらう まずは糖尿病がどのような病気で、なぜ日々の自己管理が大切なのかを、一緒に理解してもらうことから始めましょう。
- 具体的に協力してほしいことを伝える 「食事の味付けを少し薄めにしてもらえると嬉しい」「体調が悪そうな時は声をかけてほしい」など、具体的に伝えるとご家族もサポートしやすくなります。
- 感謝の気持ちを伝える 支えてくれることへの感謝を言葉にすることが、良好な関係を保ちながら、前向きに治療を続ける力になります。
職場へ伝える時のポイント
- 伝える相手と範囲を決める まずは直属の上司に相談するのが一般的です。どこまでの範囲に伝えるかは、ご自身の判断で構いません。
- 伝える内容を整理する 病名、定期的な通院が必要なこと、低血糖(血糖値が下がりすぎること)の症状と、その際の対処法(飴やジュースを摂るなど)を簡潔に説明しましょう。
- 仕事への意欲を伝える 自己管理をしっかり行い、業務に支障が出ないよう努める姿勢を伝えることが、周囲の理解と安心につながります。
糖尿病だからといって、何かを諦める必要はありません。 大切なのは、ご自身の状態を正しく理解し、必要な時に周囲にサポートをお願いすることです。 伝え方などで悩んだときは、いつでも私たち医療スタッフにご相談ください。一緒に最適な方法を考えましょう。
まとめ
今回は、糖尿病の気づきにくい初期症状から、診断後の生活の工夫まで詳しく見てきました。
糖尿病は自覚症状がないまま静かに進行しますが、早期に気づき、適切な対応を始めることが、深刻な合併症を防ぎ、健やかな毎日を守るための何よりの鍵となります。
ご紹介した12のサインの中に、少しでも思い当たることはありましたでしょうか。「気のせいかもしれない」と感じるその小さな変化こそ、あなたの身体が送る大切なSOSかもしれません。
ご自身の身体からのメッセージを決して見過ごさず、不安なことや気になることがあれば、どうか一人で抱え込まずに、お近くの内科や専門のクリニックへご相談ください。その一歩が、あなたの未来の健康を守る方法です。
参考文献
- Franks PW, Sargent JL. "Diabetes and obesity: leveraging heterogeneity for precision medicine." European heart journal 45, no. 48 (2024): 5146-5155.
- Li YY, Yu Y, Jing HB, Gu YH, Zhang HF, Bao WP, Liu C, Cao L, Fan YF. "Global epidemiology of diabetes and prediabetes in lean or non-obese patients with NAFLD: a systematic review and meta-analysis." Annals of medicine 58, no. 1 (2026): 2602995.
- NAFLDを有する非肥満患者における糖尿病および前糖尿病の世界的な疫学:システマティックレビューとメタアナリシス


