糖尿病の治療において運動が重要だと分かっていても、ウォーキングと筋トレ、どちらが本当に効果的なのか、どう組み合わせれば良いのかと悩む方は多いのではないでしょうか。私たちの体にとって、筋肉は最大の糖消費器官であり、その鍛え方次第で血糖コントロールは大きく変わります。しかし、やみくもな運動は避けたいですよね。
本記事では、ウォーキングと筋トレがそれぞれどのように血糖値に作用するのかを深く掘り下げ、なぜ筋力トレーニングが特に糖尿病改善に重要なのかを解説します。さらに、ご自宅で手軽にできる実践的なメニューや、運動を続ける上での注意点、専門医によるサポートのメリットまで、あなたの疑問を解決し、より効果的に糖尿病と向き合うための具体的なヒントを提供します。最適な運動習慣を見つけ、血糖値の安定と健康な体を手に入れましょう。
ウォーキングと筋トレ、どっちが効く?糖尿病改善に効果的な筋肉の鍛え方
糖尿病の治療は、薬物療法だけでなく、日々の生活習慣の見直し、特に運動がとても大切な柱になります。どんな運動がいいのか、どちらが効果的なのかと、患者さんが悩むことは少なくないかもしれません。私たち医師も、患者さん一人ひとりのライフスタイルや状態に合わせた選択を一緒に考えています。
これは、薬物療法一つをとっても同じです。例えば、糖尿病のお薬の中には、週に一度飲むタイプと毎日飲むタイプがあります。ある研究によると、週に一度飲むタイプの薬(DPP-4阻害薬)と毎日飲むタイプの薬を比較した場合、患者さんの服薬のしやすさや治療への満足度に大きな差はありませんでしたが、週に一度飲むタイプの薬の方が、血糖値のコントロールの目安であるHbA1cの数値がより改善したという報告もあります。ただし、週1回投与の薬では、筋肉や関節の痛みなどの副作用が少し増える可能性も指摘されています。このように、薬の種類や服薬の回数によって効果や体への負担感が異なるのと同じように、運動療法もご自身に合った方法を見つけることがとても大切です。今回は、ウォーキングと筋トレ、それぞれの運動が糖尿病改善にどう役立つのかを詳しくお話しします。
ウォーキングと筋トレ、それぞれの血糖値への効果
ウォーキングのような有酸素運動と、筋トレのような筋力トレーニングでは、血糖値へのアプローチの仕方が少し違います。
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ウォーキング(有酸素運動)
- 体を動かすことでエネルギーを消費します。
- 血液中の糖を直接燃やして使います。
- 食後にウォーキングをすると、食後の急激な血糖値の上昇を抑えることができます。
- 続けることで、インスリンというホルモンが効きやすくなる「インスリン感受性」が一時的に改善されます。
- これは、細胞が血液中の糖を取り込みやすくなる状態のことです。
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筋トレ(筋力トレーニング)
- 筋肉そのものを強く、大きくします。
- 筋肉は体の中で最大の糖の消費器官です。
- 筋肉量が増えると、より多くの糖を蓄え、消費できる体に変わります。
- 安静にしている時でも、より多くの糖を消費できるようになります。
- 長期的に見てインスリンの働きが改善され、血糖値を安定させる効果が期待できます。
どちらの運動も大切ですが、それぞれ異なるメカニズムで糖尿病の改善をサポートしていることを理解しておきましょう。
基礎代謝アップで血糖コントロール!筋トレの5つのメリット
基礎代謝とは、私たちが生きていくために最低限必要なエネルギーのことです。例えば、寝ていたり、じっと座っていたりする時でも、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を保ったりするために消費されるエネルギーを指します。この基礎代謝を上げることは、糖尿病の改善において非常に重要な意味を持ちます。筋トレによって筋肉量が増えると、基礎代謝が向上し、さまざまな良い効果が期待できます。
筋トレがもたらす5つのメリットをご紹介します。
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筋肉量が増えて、安静時のエネルギー消費が増える
- 筋肉は脂肪よりも多くのエネルギーを消費する組織です。
- 筋肉量が増えれば、何もしなくても消費されるカロリーが増えます。
- その結果、太りにくい体になります。
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インスリン感受性が高まり、血糖値が下がりやすくなる
- 筋肉が増えることで、体の中のインスリンが効率よく働くようになります。
- 細胞が血液中の糖をスムーズに取り込みやすくなります。
- これにより、血糖値が安定しやすくなります。
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体脂肪が減り、内臓脂肪も減少する
- 筋トレは脂肪を燃やすことを促進します。
- 特に糖尿病のリスクを高める内臓脂肪の減少に効果的です。
- 肥満は2型糖尿病とその合併症を悪化させる大きな要因となります。
- 薬物療法でも体重を減らす効果が期待できるものがあります。
- 例えば、最近の研究では、GLP-1受容体作動薬という種類のお薬が、体重を減らし、HbA1cという血糖値の長期的な指標を改善することが報告されています。
- オルホグリプロンという経口(飲み薬の)GLP-1受容体作動薬の第3相試験では、肥満のある2型糖尿病の患者さんが72週間(約1年半)服用したところ、生活習慣の改善に加えてプラセボ(偽薬)を飲んだ場合に比べて、体重が平均で2.7%から7.1%減少し、HbA1cも統計的に意味のある改善が見られました。
- ただし、この薬では胃腸の不調などの副作用が出ることもあるため、医師とよく相談しながら治療を進めることが大切です。
- このように、薬物療法と合わせて運動による体重管理はとても大切です。
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骨密度が維持・向上し、転倒予防にもつながる
- 筋トレは骨に適度な負荷をかけ、骨を強くします。
- 骨粗しょう症という骨がもろくなる病気の予防にもつながります。
- 特に下半身の筋力アップは、転んでしまうリスクを減らします。
- 活動的な生活を長く続ける上でとても重要です。
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自信がつき、ストレス軽減にも役立つ
- 運動を続けることで達成感が得られます。
- ストレスの軽減や気分の向上にもつながります。
- 心の健康も、糖尿病治療において大切な要素の一つです。
運動の種類で変わる血糖コントロールのメカニズム
血糖値のコントロールは、運動の種類によってその働きが少し違ってきます。
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ウォーキングなどの有酸素運動
- 体を動かしているその瞬間に、血液中のブドウ糖をエネルギーとして使います。
- そのため、運動中の血糖値を下げる効果が強いのが特徴です。
- 特に食後に血糖値が上がりやすいタイミングで行うと、急激な血糖値の上昇(スパイク)を抑えることにつながります。
- 体中の細胞がブドウ糖を取り込みやすくなるため、インスリンの効きも一時的に良くなります。
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筋トレなどの筋力トレーニング
- 運動後も血糖値を下げる効果が続くのが大きな特徴です。
- 筋肉が増えることで、ブドウ糖を貯めておける場所が増えます。
- さらに、インスリンが働く効率も良くなります。
- これにより、運動していない時でも血糖値が安定しやすくなるのです。
有酸素運動は「その場で血糖値を下げる」、筋トレは「血糖値を下げやすい体を作る」というイメージを持つと分かりやすいでしょう。
糖尿病改善に筋トレが特に重要な3つの理由
糖尿病の改善において、筋トレが特に重要だと言われるのにはいくつかの理由があります。ただ運動するだけでなく、筋肉を意識して鍛えることで、より効率的に血糖値をコントロールできる体を目指すことができます。
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筋肉は最大の糖消費器官だから
- 私たちの体の中で、最も多くのブドウ糖をエネルギーとして消費しているのは筋肉です。
- 筋肉量が多いほど、食べたものから吸収された糖を効率よく消費できます。
- そのため、血糖値が上がりにくくなります。
- 日々の活動はもちろん、安静にしている間でも筋肉は糖を消費しています。
- 筋肉量を増やすことは、まるで「血糖値を燃やす工場」を大きくするようなものです。
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インスリン抵抗性の改善に役立つから
- 糖尿病、特に2型糖尿病では、インスリンは分泌されているのに、そのインスリンがうまく働かない「インスリン抵抗性」という状態がよく見られます。
- 筋トレによって筋肉量が増えると、このインスリンの効きが良くなることがわかっています。
- インスリンが効率よく働くようになれば、少ないインスリン量でも血糖値を下げられます。
- 膵臓への負担も減らすことができます。
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基礎代謝を向上させ、太りにくい体を作るから
- 前述のとおり、筋トレは基礎代謝を上げます。
- 基礎代謝が上がると、同じ生活をしていても消費カロリーが増えます。
- その結果、体重管理がしやすくなります。
- 糖尿病は、見た目が痩せている方(非肥満の方)にも見られることがあります。
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)という、お酒を飲まないのに肝臓に脂肪がたまる病気をお持ちの非肥満の方々でも、糖尿病やその前段階(前糖尿病)のリスクが高まることが研究で示されています。
- 世界的に行われた調査のまとめ(システマティックレビューとメタアナリシス)では、NAFLDを持つ非肥満の方の約15.6%が糖尿病を、約22.9%が前糖尿病であることが報告されています。
- このことからも、体重にかかわらず、筋肉を増やして基礎代謝を上げることが、糖尿病の改善や予防に非常に重要だと言えるでしょう。
有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせ効果
糖尿病の改善を目指すなら、ウォーキングのような有酸素運動と、筋トレのような筋力トレーニングを組み合わせることが、もっとも効果的であると言えます。それぞれの運動には異なる良い点があり、両方をバランスよく行うことで、お互いのメリットを最大限に引き出し、相乗効果が期待できるからです。
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有酸素運動
- 運動中に直接血糖値を下げます。
- 脂肪を燃焼させる効果があります。
- これにより、食後の高血糖を抑え、体重減少にもつながります。
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筋力トレーニング
- 筋肉量を増やし、基礎代謝を高めます。
- 長期的に血糖値を安定させる体質改善に役立ちます。
例えば、ウォーキングで運動習慣を身につけ、その後スクワットなどの筋トレを取り入れることで、短期間の血糖コントロールと長期的な体質改善の両方を効率よく行うことができるでしょう。どちらか一方だけを行うよりも、両方をバランス良く組み合わせることで、より効率的に糖尿病と向き合い、健康的な生活を送ることができるはずです。
自宅でできる!糖尿病を改善する実践筋トレメニュー5選
糖尿病の改善には運動が大切であると、多くの患者さんがご理解くださっています。しかし、多忙な日々の中で、ジムに通う時間を作ったり、特別な器具を準備したりすることは、簡単なことではありません。当院の医師も、そうした患者さんの声に耳を傾けています。ご安心ください。ご自宅で手軽に実践できる筋力トレーニングでも、糖尿病の改善には大きな効果があります。筋肉を適切に鍛えることで、体の中のブドウ糖の消費量が増え、血糖値のコントロールがしやすくなります。今日から無理なく始められるメニューを、一緒に確認していきましょう。
運動不足でも安心!今日から始める筋トレの第一歩
運動不足の方や、体力に自信がない方でも、無理なく筋力トレーニングを始めるための大切なポイントがいくつかあります。私たちは、患者さんが運動習慣を継続できるよう、医師として丁寧にサポートさせていただきます。最初から高い目標を立てると、途中で挫折してしまうことも少なくありません。ご自身の体と相談しながら、少しずつ運動習慣を身につけていくことが大切です。
- ウォーミングアップを忘れずに
- 体を温める準備運動は、けがを防ぐために非常に重要です。
- 軽いストレッチや足踏みを5分ほど行い、筋肉や関節をゆっくりとほぐしましょう。
- 体が温まることで、運動の効果も高まります。
- 無理のない回数からスタート
- 最初のうちは、各運動を5回から10回程度、ご自身の体調に合わせて行いましょう。
- 痛みを感じた場合は、すぐに中止してください。
- 大切なのは、無理なく「続けること」です。
- 週に2~3回を目安に
- 筋力トレーニングは毎日行う必要はありません。
- 筋肉は運動後に回復する時間が必要です。
- 週に2~3回を目安に、日を空けて行うことで、効果的に筋肉を鍛えられます。
- 記録をつけてみましょう
- 運動した日や内容を記録すると、ご自身の努力が目に見える形になります。
- これは達成感につながり、モチベーション維持にとても役立ちます。
- 2型糖尿病の治療では、薬をきちんと飲み続けること(服薬アドヒアランス)が非常に重要ですが、運動も無理なく継続することが治療成功の鍵となります。
- ある研究では、週1回の薬と毎日飲む薬とで患者さんの服薬のしやすさに差はなかったと報告されていますが、運動もご自身に合った方法を見つけることが大切です。
糖尿病の方向け!スクワットの正しいやり方とポイント
スクワットは、体の中で特に大きな筋肉である太ももやお尻をまとめて鍛えられる、非常に効果的な運動です。大きな筋肉を鍛えることで、基礎代謝が向上し、血糖値をコントロールしやすくなります。しかし、正しいフォームで行わないと、膝や腰を痛める原因にもなります。当院の医師も、患者さんが安全に運動できるよう、正しい方法をお伝えしています。
スクワットの正しいやり方
- 足の位置: 足を肩幅よりやや広めに開きます。
- つま先は、少しだけ外側に向けるのがポイントです。
- 姿勢の準備: 背筋をまっすぐ伸ばし、目線はまっすぐ前を見ましょう。
- 膝の向きと動作: 息を吸いながら、椅子に座るようなイメージでゆっくりとお尻を下げていきます。
- このとき、膝がつま先よりも前に出すぎないように意識してください。
- 膝とつま先は、常に同じ方向を向くようにしましょう。
- 深さの目安: 太ももが床と平行になるくらいまで下げるのが理想です。
- しかし、最初は無理のない深さで構いません。
- 深すぎると膝や腰に大きな負担がかかる可能性があります。
- 立ち上がり: 息を吐きながら、太ももの筋肉とお尻の筋肉を意識して、ゆっくりと元の姿勢に戻りましょう。
スクワット効果アップのポイント
- 目線: 前方を見つめることで、背筋が伸びやすくなります。
- 正しい姿勢を保ちやすくなる効果が期待できます。
- 腹筋: お腹に軽く力を入れると、体の中心が安定します。
- 腰への負担を減らすことにもつながります。
- お腹をへこませるような意識を持つと良いでしょう。
- 無理はしない: 膝や腰に痛みを感じたら、すぐに運動を中断してください。
- 無理をして続けることは、けがの原因となるだけでなく、運動そのものが嫌になってしまうことにつながります。
器具なしでOK!室内でできる簡単筋トレメニュー
特別な器具がなくても、ご自宅でできる筋力トレーニングはたくさんあります。全身の筋肉をバランスよく鍛えることで、より効果的に糖尿病の改善を目指すことができます。私たちは、患者さんの状況に合わせて、手軽に続けられる運動を提案しています。ここでは、室内で簡単に取り組めるおすすめの筋力トレーニングメニューをいくつかご紹介します。
- プッシュアップ(腕立て伏せ)
- 方法: 膝をついた状態から始める「膝つきプッシュアップ」は、運動初心者の方でも取り組みやすい方法です。
- 床に手をつき、肩の真下にくるように置きます。
- ゆっくりと胸を床に近づけ、またゆっくりと元の位置に戻しましょう。
- 胸や腕、肩の筋肉を効果的に鍛えることができます。
- プランク
- 方法: うつ伏せになり、肘とつま先で体を支える体幹トレーニングです。
- 頭からかかとまでが一直線になるように意識し、お腹に力を入れます。
- 30秒キープから始め、徐々に時間を伸ばしていきましょう。
- お腹周りの筋肉を強化し、良い姿勢の維持にも役立ちます。
- レッグレイズ
- 方法: 仰向けに寝て、足をまっすぐ伸ばしたままゆっくりと上げ下げする運動です。
- 腰を痛めないよう、腰が床から浮かないように注意しながら行ってください。
- 下腹部の筋肉を鍛えることができます。
- カーフレイズ(かかと上げ)
- 方法: 壁などに手をつき、安定した姿勢で立ちます。
- かかとをゆっくり上げ、つま先立ちの状態を数秒間保ち、またゆっくりとかかとを下ろします。
- ふくらはぎの筋肉を鍛え、足の血行促進にもつながります。
- バックエクステンション(背筋)
- 方法: うつ伏せに寝て、腕は頭の後ろか体の横に置きます。
- 息を吐きながらゆっくりと上半身を床から持ち上げ、息を吸いながらゆっくりと元の姿勢に戻します。
- 背中の筋肉を鍛え、姿勢を良くする効果が期待できます。
運動効果を最大化する!正しいフォームと呼吸法
筋力トレーニングの効果を最大限に引き出し、同時に体への負担を減らすためには、正しいフォームと呼吸法が欠かせません。これらを意識することで、安全に、そして効率的に筋肉を鍛えることができます。私たちは患者さんに対し、ただ体を動かすだけでなく、一つ一つの動作を丁寧に行うことの重要性を伝えています。
効果を最大化するポイント
- ゆっくりとした動作
- 筋肉が縮んだり伸びたりするのを意識しながら、ゆっくりと動作を行いましょう。
- 反動を使わずに、筋肉に継続して負荷をかけることが重要です。
- これにより、筋肉への刺激が深まり、より効率的に筋力アップが期待できます。
- 関節の固定
- 鍛えたい筋肉以外の関節は、なるべく固定し、無駄な動きをしないように心がけます。
- 例えば、スクワットでは膝と股関節を意識し、腰を丸めないように行います。
- 正しい関節の使い方は、けがの予防にもつながります。
- 呼吸法
- 筋肉に力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うのが基本です。
- 例えば、スクワットで体を下げる(負荷がかかる)ときに息を吸い、立ち上がる(力を入れる)ときに息を吐きましょう。
- 呼吸を止めると血圧が上がる原因にもなりますので、特に注意が必要です。
- 深く呼吸を意識することで、リラックス効果も期待できます。
- 集中
- どの筋肉を鍛えているのかを意識しながら行うことで、より効果的に筋肉を刺激できます。
- 筋肉と心をつなげる「マインドマッスルコネクション」を実践してみましょう。
- 自分の体に向き合うことで、運動への意識も高まります。
筋トレで筋肉量を増やし、体脂肪を減らす食事のコツ
筋力トレーニングで筋肉量を増やし、効率よく体脂肪を減らすためには、運動だけでなく食事の見直しも非常に重要です。食事は、筋肉を作るための材料を供給し、運動による効果を最大限に引き出すための土台となります。当院の医師も、患者さんの食事内容についてきめ細かくアドバイスを行っています。
- タンパク質を意識的に摂る
- 筋肉の材料となるタンパク質は、積極的に摂りましょう。
- 鶏むね肉、ささみなどの肉類、魚、卵、豆腐や納豆などの大豆製品、乳製品などが良い供給源です。
- 毎食、手のひらに乗るくらいの量を摂ることを目安にすると良いでしょう。
- 糖質・脂質のバランス
- 必要以上に糖質や脂質を摂りすぎないよう注意しつつも、不足しすぎないようにバランス良く摂ることが大切です。
- 全粒穀物や野菜から、質の良い糖質や食物繊維を摂ることで、血糖値の急激な上昇を抑えられます。
- 特に食物繊維は、食後の血糖値上昇を穏やかにするだけでなく、腸内環境を整える効果も期待できます。
- 規則正しい食事
- 血糖値の急激な上昇を避けるため、1日3食、規則正しい時間に食べることを心がけます。
- 空腹時間が長すぎると、次の食事で血糖値が急上昇しやすくなります。
- 間食を控えることも、血糖値の安定には重要です。
- 水分補給
- 運動中は特に、こまめな水分補給を忘れずに行いましょう。
- 水やお茶で、しっかりと水分を補給してください。
- 体内の水分が不足すると、パフォーマンスの低下や体調不良につながる可能性があります。
- 多角的なアプローチの重要性
- 最新の研究では、薬物療法と運動・食事療法を組み合わせることの重要性がさらに強調されています。
- 例えば、経口GLP-1受容体作動薬であるオルホグリプロンが、肥満を持つ2型糖尿病の患者さんの体重減少と血糖値(HbA1c)を含む心臓や血管、代謝に関わるさまざまな数値の改善に大きく貢献することが示されました。
- 72週間(約1年半)の服用で、平均で2.7%から7.1%の体重減少が見られたという報告もあります。
- ただし、この薬では胃腸の不調などの副作用が出ることもあるため、医師とよく相談しながら治療を進めることが大切です。
- また、アミリン製剤などの特定の薬物療法が、体内のレニン・アンジオテンシン系という、血圧や体液のバランスを調整する重要なシステムに影響を与え、心臓や腎臓を保護する効果をもたらす可能性も示唆されています。
- このように、運動と食事だけでなく、患者さんの状態に合わせた薬物療法を適切に組み合わせることで、より包括的な糖尿病治療が可能になります。
- ご自身の治療について気になることがあれば、いつでも当院の医師や専門スタッフにご相談ください。
運動療法で血糖値を安定させる!知っておくべき5つの注意点とクリニックの役割
糖尿病と診断された方が、運動を始めようと考えていても、何から始めたら良いか、どんなことに気をつけたら良いかと不安に思うことは少なくないでしょう。運動療法は、血糖値を安定させ、糖尿病の改善には欠かせない大切な治療の一つです。しかし、やみくもに行うのではなく、正しい知識を持って安全に取り組むことが非常に重要です。この章では、運動療法を行う上で知っておきたい大切な注意点と、当院がどのように皆さまをサポートできるかをご紹介します。私たちは、患者さんが安心して、そして効果的に運動を続けられるよう、丁寧にサポートさせていただきます。
運動中の低血糖・高血糖を防ぐ対策と対処法
運動療法は、血糖値を下げる効果が期待できます。しかし、場合によっては血糖値が下がりすぎて「低血糖」になったり、反対に一時的に上がりすぎてしまう「高血糖」になったりすることがあります。これらの状態を防ぎ、もしもの時に適切に対処できるよう、以下の点に注意しましょう。
- 運動前に血糖値を確認する習慣をつけましょう
- 運動を始める前には、必ずご自身の血糖値を確認しましょう。
- 血糖値が低すぎたり、高すぎたりしないかを知ることは、安全な運動のために大切です。
- 低血糖が心配な場合(血糖値が100mg/dL未満など)
- 運動前にブドウ糖や血糖値を上げる作用のある補食(バナナやクラッカーなど)を摂ることで、低血糖を予防できます。
- 血糖値が低い状態で運動を始めると、体のだるさやめまい、ひどい時には意識を失う危険性があります。
- 高血糖が心配な場合(血糖値が250mg/dL以上など)
- 運動を控えるか、医師に相談してください。
- 高血糖の状態で激しい運動をすると、かえって血糖値が上がることもあります。
- 血糖値が高すぎる状態での運動は、体に大きな負担をかけることになります。
- 補食を必ず持ち歩きましょう
- 運動中に低血糖の症状(めまい、ふらつき、冷や汗、動悸など)が出た時に備え、すぐに摂れるブドウ糖や飴、ジュースなどを携帯してください。
- 早く対処することで、症状が悪化するのを防ぐことができます。
- 水分補給をこまめに行いましょう
- 運動中は汗をかくため、脱水状態になると血糖値が上がりやすくなることがあります。
- 水やお茶でこまめに水分を補給しましょう。
- 脱水は、体全体の不調にもつながります。
- 運動の前後で血糖値を測りましょう
- 運動がご自身の血糖値にどのような影響を与えるかを知るために、運動の前後で血糖値を測ると良いでしょう。
- 血糖値の記録をつけることで、ご自身に合った運動の量やタイミングを見つける手助けになります。
もし低血糖の症状が出た場合は、すぐにブドウ糖を10g摂取してください。それでも症状が改善しない場合は、再度ブドウ糖を摂るか、周囲の人に助けを求めましょう。高血糖の状態が続くようであれば、運動を中止し、しばらく休んでからもう一度血糖値を測ってみてください。不安な場合はいつでも当院にご相談ください。
合併症があっても大丈夫?運動する前のチェックポイント
糖尿病にはさまざまな合併症があります。合併症の種類や進行度合いによっては、運動ができない場合や、特定の運動を避けるべき場合があります。運動は血糖値を改善する素晴らしい方法ですが、安全に始めるためには、以下のチェックポイントを参考に、必ず事前に医師と相談しましょう。
- 心臓や血管の合併症
- 心筋梗塞や狭心症の既往がある方、不整脈がある方、高血圧の方は、運動の種類や強度に制限が必要な場合があります。
- 心臓に負担がかかるような激しい運動は避けるべきです。
- 運動中に胸の痛みや息苦しさを感じたら、すぐに中止し、医師に相談してください。
- 目の合併症(糖尿病性網膜症)
- 網膜症が進行している場合、強い力んだり、頭部に衝撃がかかるような運動(跳躍運動、重量挙げなど)は、眼底出血のリスクを高める可能性があります。
- 目への負担を最小限に抑えるため、穏やかな運動を選ぶことが大切です。
- 腎臓の合併症(糖尿病性腎症)
- 腎機能が低下している場合、過度な運動は腎臓に負担をかけることがあります。
- 適切な運動強度を医師と相談することが大切です。
- 激しすぎる運動は、腎臓への血流に影響を与える可能性があります。
- 神経の合併症(糖尿病性神経障害)
- 足の感覚が鈍くなっている方や、しびれがある方は、足に合わない靴での運動や、足に負担のかかる運動(長時間のウォーキング、ランニングなど)をすると、足に傷や潰瘍ができやすくなることがあります。
- 運動前に必ず足の状態を確認し、クッション性のある靴を選ぶなどして、足を守りましょう。
- 小さな傷が大きなトラブルにつながることもあるため、注意が必要です。
- 足の合併症(糖尿病性足病変)
- 足に傷や潰瘍がある場合は、その治癒を妨げる可能性があるので、運動を控える必要があります。
- 傷がある状態で運動を続けると、感染症のリスクも高まります。
運動は血糖値の改善だけでなく、体力向上やストレス軽減にもつながります。しかし、ご自身の体の状態に合わせた安全な方法を選ぶことが最も大切です。当院では、専門医が患者さんの合併症の状態を詳しく確認し、一人ひとりに合った運動計画を一緒に考え、安全に取り組めるようサポートいたしますので、ご安心ください。
運動療法を続けるモチベーション維持の秘訣
運動療法は継続が大切だとわかっていても、「なかなか続かない」「モチベーションが上がらない」と感じる方は少なくありません。運動を生活の一部として楽しく続けるための秘訣をいくつかご紹介します。私たちは、患者さんが運動習慣を無理なく継続できるよう、様々な角度からサポートしたいと考えています。
- 小さな目標から始めましょう
- いきなり高い目標を設定するのではなく、「今日は10分だけ歩いてみよう」「週に2回はストレッチをしよう」など、無理なく達成できる小さな目標から始めてみてください。
- 小さな成功体験が、次のモチベーションへと繋がります。
- 運動記録をつけましょう
- スマートウォッチやスマートフォンアプリ、手書きのノートでも構いません。
- いつ、どんな運動を、どれくらいの時間行ったかを記録することで、ご自身の頑張りを「見える化」できます。
- 血糖値の変化も一緒に記録すると、運動の効果を実感しやすくなり、やる気アップに繋がります。
- ご褒美を設定しましょう
- 目標を達成したときには、ご自身にご褒美をあげましょう。
- 例えば、新しい運動着を買う、好きな映画を観る、ゆっくりお風呂に入るなど、運動以外の楽しみを見つけることが継続の秘訣です。
- 家族や仲間と一緒に取り組みましょう
- 一人で運動するよりも、家族や友人と一緒に取り組むことで、励まし合いながら楽しく続けられます。
- お互いに目標を共有し、支え合うことは、運動療法を継続するための大きな力になります。
- ある研究によると、家族が糖尿病管理の教育に参加し、患者さんのサポートをすることで、より良い結果に繋がるという報告があります。
- 例えば、8歳未満の1型糖尿病のお子さまの場合でも、家族中心の教育的介入が合併症を減らし、入院を減らす効果があることが示されています。
- これは成人糖尿病の運動療法にも通じる大切な考え方です。
- 家族が患者さんの運動に理解を示し、例えば一緒に散歩に出かけたり、家事の分担を見直したりするだけでも、患者さんの運動への意欲は大きく高まります。
- 運動を楽しむ工夫をしましょう
- 好きな音楽を聴きながらウォーキングをする、テレビを見ながら室内運動をする、興味のあるスポーツに挑戦するなど、運動そのものを楽しむ工夫を見つけましょう。
- 運動を義務感ではなく、生活の楽しみの一つとして捉えることが大切です。
運動は義務ではなく、ご自身の健康を守り、より豊かな生活を送るための大切な時間です。無理なく、そして楽しく、ご自身のペースで継続できる方法を一緒に見つけていきましょう。
専門医がサポート!当院での運動指導と相談のメリット
糖尿病の運動療法は、ただ体を動かせば良いというものではありません。患者さん一人ひとりの体の状態、生活習慣、合併症の有無などを考慮し、最適な運動計画を立てることが非常に重要です。当院では、糖尿病・甲状腺・内分泌の専門医が複数在籍しており、皆さまが安心して運動療法に取り組めるよう、きめ細やかなサポートを提供しています。
- 個別化された運動計画の作成
- 患者さんの現在の血糖コントロール状況、合併症の有無、運動経験、体力レベルなどを詳しく評価します。
- その上で、安全で効果的な運動メニューを一緒に作成します。
- ウォーキング、筋力トレーニング、室内運動など、さまざまな選択肢の中から、患者さんに合った無理のない運動を選び、具体的なやり方や頻度、強度をアドバイスいたします。
- 運動中の注意点やリスクの共有
- 運動中の低血糖・高血糖の対策や、足病変など合併症がある場合の注意点、緊急時の対処法などを丁寧に説明します。
- ご不明な点や不安なことは、何でもお気軽にご相談いただけます。
- 私たち医師は、患者さんの安全を最優先に考えています。
- 他の生活習慣病との関連も考慮
- 糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症といった他の生活習慣病も併せて改善できるよう、総合的な視点から運動指導を行います。
- 全身の健康状態をトータルでサポートすることが私たちの役割です。
- 利便性の高い環境で継続をサポート
- 当院は仙川駅から徒歩1分とアクセスが良く、土日診療や夜間19時までの受付も行っています。
- また、必要に応じて24時間対応の訪問診療も実施しており、通院が難しい方でも継続して運動療法に関する相談が可能です。
- 専門医による治療と、患者さんの負担を考慮した連続血糖測定器(リブレ)導入など、皆さまの治療を多角的にサポートいたします。
ご自身の力だけでは運動療法を続けるのが難しいと感じている方、どんな運動をしたら良いか迷っている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。専門医と一緒に、より健康的で充実した毎日を目指しましょう。
薬物療法との併用でより効果的な糖尿病改善
糖尿病の治療では、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善が基本的な柱となります。しかし、それだけでは血糖コントロールが難しい場合、薬物療法が必要となることがあります。運動療法と薬物療法を適切に組み合わせることで、それぞれが異なるメカニズムで血糖値に働きかけ、より効果的に糖尿病を改善し、合併症のリスクを減らすことが期待できます。
最近では、薬物療法も大きく進歩しており、患者さんの状態に合わせた多様な選択肢があります。
- 新しい薬物療法との組み合わせ
- 例えば、2型糖尿病で肥満を伴う方の場合、経口のGLP-1受容体作動薬である「オルホグリプロン」というお薬が注目されています。
- このお薬は、体重減少や血糖値の長期的な目安であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の改善に効果的であることが示されています。
- ある研究では、肥満のある2型糖尿病の患者さんが72週間(約1年半)この薬を服用したところ、生活習慣の改善に加えてプラセボ(偽薬)を飲んだ場合に比べて、体重が平均で2.7%から7.1%減少したと報告されています。
- 同時に、HbA1cを含む心血管代謝(心臓や血管、体の代謝)に関わるさまざまな数値も統計的に意味のある改善が見られました。
- オルホグリプロンは、胃腸の不調などの副作用が出ることがありますが、専門医の指導のもとで安全に使用できます。
- このように、運動と食事の改善と併せて新しい薬物療法を組み合わせることで、より高い治療効果が期待できるのです。
- DPP-4阻害薬の選択肢と効果
- また、「DPP-4阻害薬」という種類のお薬も広く使われています。
- この薬には、週に1回飲むタイプと毎日飲むタイプがあります。
- ある研究によると、どちらのタイプの薬を選んでも、薬をきちんと飲み続けること(服薬アドヒアランス)や治療に対する満足度に大きな差はないとされています。
- しかし、週1回飲むタイプのDPP-4阻害薬の方が、毎日飲むタイプと比べてHbA1cの値をより改善する可能性が示唆されています。
- その一方で、週1回飲むタイプの薬では、筋肉や関節の痛みなどの副作用のリスクがわずかに高まる可能性も指摘されています。
- このように、薬の種類や服薬の回数によって効果や体への負担感が異なるため、患者さんの体の状態や生活習慣に合わせて、医師とよく相談して最適な薬を選ぶことが大切です。
- 私たち医師は、患者さんのライフスタイルや服薬の負担も考慮し、一人ひとりに合わせた薬物療法を提案いたします。
運動は筋肉による糖の利用を促し、薬はインスリンの働きを助けたり、糖の吸収を抑えたりするなど、さまざまな方法で血糖値をコントロールします。両者を併用することで、お互いの効果を高め合い、より安定した血糖管理を目指せるのです。ご自身の治療計画について不安な点があれば、いつでも当院の専門医にご相談ください。私たちは、患者さん一人ひとりに寄り添い、より良い治療法を一緒に考えていきます。
まとめ
「ウォーキングと筋トレ、どっちが効く?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、 糖尿病改善には、どちらか一方だけでなく、有酸素運動と筋トレの両方をバランス良く取り入れることが大切です。 ウォーキングのような有酸素運動は運動中に直接血糖値を下げる効果があり、筋トレは筋肉量を増やし、 基礎代謝を上げて長期的に血糖値を安定させる、体質改善に非常に効果的なアプローチとなります。
筋肉は体の中で最大の糖消費器官ですから、筋トレによって血糖値をコントロールしやすい体づくりが期待できます。 ご自宅でできる簡単な筋トレからでも、今日から無理なく始めてみませんか。 運動中の注意点やご自身の体に合った方法が不安な場合は、専門の医師に相談して、 あなたにぴったりの運動計画を立ててもらうのがおすすめです。 薬物療法とも組み合わせることで、より効果的に糖尿病と向き合い、健康的な毎日を目指していきましょう。
参考文献
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