「最近、足がむくみやすくなった」「おしっこが泡立っている気がする」――。もしかしたら、そんな体の変化に不安を感じていませんか? これらのサインは、あなたの腎臓が助けを求めている危険信号かもしれません。腎臓病は「沈黙の臓器」とも呼ばれるほど、初期には自覚症状が少ないため、気づかぬうちに進行し、放置すると人工透析が必要になる場合もあります。特に糖尿病をお持ちの方は、腎臓病を合併しやすく、より一層の注意が必要です。
しかし、ご安心ください。大切な腎臓を守るための方法は存在します。この記事では、むくみや泡立つ尿といった体からのサインが示す意味から、透析を回避するために今すぐできる具体的な5つの腎臓ケアについて、糖尿病内科専門医の視点から詳しく解説します。あなたの腎臓が今どのような状態にあるのかを把握し、一緒に改善していくための第一歩を踏み出しましょう。
むくみが気になりだしたら。透析を避けるために今すぐできる腎臓ケア
「最近、足がむくみやすくなった」「おしっこが泡立っている気がする」――。もしかしたら、そんな体の変化に不安を感じていませんか? これらのサインは、あなたの腎臓が助けを求めている危険信号かもしれません。腎臓病は「沈黙の臓器」とも呼ばれるほど、初期には自覚症状が少ない病気です。
しかし、むくみや泡立つ尿といった異変に気づいた時、それは病気が静かに進行している合図かもしれません。特に、糖尿病をお持ちの方は、腎臓病を合併しやすい傾向があるため、より一層注意が必要です。私たちは、皆さんが安心して日々の生活を送れるよう、これらのサインが何を意味するのか、そしてどのように向き合っていくべきか、一緒に考えていきたいと思います。

むくみが示すサイン:足や顔の腫れに要注意
むくみは、体の中に余分な水分が溜まってしまうことで、皮膚の下が腫れて見える状態を指します。具体的には、以下のような症状が見られます。
- 足のすねや甲、くるぶしの腫れ
- 靴下のゴムの跡が強く残る
- 指で押すとへこんだ跡がなかなか元に戻らない
- まぶたや顔の腫れ
- 朝起きた時に顔が腫れぼったい、目が開けにくいと感じる
- 体重の急激な増加
- 短期間で理由なく体重が増えたと感じる
腎臓は、血液をろ過して体内の水分量や塩分量を調整し、老廃物を尿として排出する大切な役割を担っています。いわば、体の中の「浄水器」のような働きです。この腎臓の働きが悪くなると、余分な水分や塩分がうまく排出されなくなり、体に溜まってむくみとして現れるのです。これは、浄水器のフィルターが詰まり、水がうまく流れなくなっている状態と似ています。
特に、糖尿病をお持ちの方は、高血糖の状態が長く続くことで腎臓に負担がかかりやすく、むくみが現れるリスクが高まります。さらに、腎臓病が進行すると筋肉量が減少する「サルコペニア」という状態になりやすいことが近年の研究でも示されています。サルコペニアとは、骨格筋の量や筋力、身体機能が低下する状態で、糖尿病もそのリスクを高める要因の一つです[2]。
むくみに加えて、「以前より疲れやすくなった」「階段の昇り降りがつらくなった」など、全身の筋肉の衰えを感じる場合も、体からの重要なサインかもしれません。このような変化を感じたら、単なる加齢のせいと見過ごさず、医師に相談することが大切です。
むくみは腎臓病だけでなく、心臓病、肝臓病、甲状腺の病気、薬剤の副作用など、さまざまな原因で起こることがあります。自己判断せずに、早めに医療機関で相談し、正確な原因を突き止めることが大切です。糖尿病内科専門医として、私たちは全身の状態を総合的に評価し、適切な診断と治療に繋げます。
泡立つ尿の原因は?タンパク尿の可能性
おしっこをした後、便器の中に泡が立ち、いつまでも消えずに残っているのを見たことはありませんか? これは「泡立つ尿」と呼ばれ、特に注意が必要な症状の一つです。泡立ちが細かい、石鹸の泡のようにきめ細かい、時間が経っても泡が消えにくいといった特徴がある場合、尿の中にタンパク質が過剰に含まれている「タンパク尿」の可能性があります。
健康な腎臓は、体にとって必要なタンパク質を体内に留め、老廃物だけを尿として排出するフィルターのような役割をしています。しかし、腎臓のフィルター機能に障害が起こると、本来排出されることのないタンパク質までが尿の中に漏れ出てしまうのです。これは、目の細かいザルで水を濾す際に、本来通ってはいけない大きな固形物まで流れ出てしまうような状態です。
糖尿病を長く患っている方の場合、高血糖の状態が続くことで腎臓の小さな血管が傷つき、このフィルター機能が徐々に低下して、糖尿病性腎症という状態になることがあります。その初期症状として、タンパク尿が現れることが多いのです。当院で糖尿病の治療を受けている患者さんの中にも、この「泡立つ尿」をきっかけに腎機能の低下に気づくケースが少なくありません。
ただし、泡立つ尿が必ずしも病気のサインとは限りません。例えば、激しい運動の後や脱水状態の時、風邪をひいている時など、一時的に尿に泡が立つこともあります。しかし、慢性的に泡立ちが続く場合や、むくみなどの他の症状を伴う場合は、腎臓からのSOSである可能性が高いので、一度医療機関を受診して尿検査を受けることをおすすめします。簡単な尿検査でタンパク尿の有無を確認できます。
腎臓病がひそむ初期症状の見分け方
腎臓病は初期の段階では自覚症状がほとんどないため、「沈黙の臓器病」、つまり病気が静かに進行してしまう病気とも呼ばれます。しかし、注意深く自分の体の変化を観察することで、早期に異変に気づける場合があります。むくみや泡立つ尿の他に、以下のような症状にも注意が必要です。
- だるさや疲れやすさ
- 腎臓の働きが悪くなると、体内に老廃物が溜まりやすくなったり、貧血が進んだりすることで、体が重く感じたり、疲れやすくなったりします。
- 食欲不振や吐き気
- 老廃物の蓄積は、消化器系にも影響を及ぼし、食欲がなくなったり、吐き気がしたりすることがあります。
- 高血圧
- 腎臓は血圧の調整にも関わっています。腎臓の機能が低下すると、血圧が上がったり、降圧剤が効きにくくなったりすることがあります。
- 貧血
- 腎臓は赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌しています。腎臓病が進むとこのホルモンの分泌が減り、貧血が起こりやすくなります。
- 夜間の頻尿
- 腎臓の濃縮機能が低下すると、夜中に何度もトイレに行きたくなることがあります。
これらの症状は、他の病気でも起こりうるため、「気のせいかな?」と見過ごしてしまいがちです。特に糖尿病をお持ちの方は、高血糖の状態が長く続くことで、自覚症状がないまま腎臓病が進行しているケースも少なくありません。当院では、採血不要の連続血糖測定器(リブレ)も導入しており、患者さんに負担の少ない方法で血糖管理を行っています。
近年、腸内環境と腎臓病の関連性も注目されています。腸内細菌が作る「トリメチルアミンN-オキシド(TMAO)」という物質が、心臓病だけでなく腎臓病の進行にも影響を与える可能性が示唆されています[1]。つまり、お腹の状態、あるいは腸内環境のバランスが腎臓の健康にも関わっているということです。このように、体の中では様々な変化が静かに進行していることがありますので、定期的な健康診断やご自身の体のサインに敏感になることが、早期発見・早期治療につながります。何か気になる症状があれば、放置せずに専門医にご相談ください。当院では、土日診療や夜間19時までの受付、24時間対応の訪問診療も行っておりますので、いつでもお気軽にご相談ください。
糖尿病性腎症の進行度と体の異変
「むくみや尿の泡立ちが気になる」と感じ始めた時、それは体からの大切なサインである可能性があります。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるほど、初期には自覚症状が出にくい臓器です。しかし、これらの変化は病気が静かに進行している合図かもしれません。特に、糖尿病をお持ちの方にとって、腎臓の異変は将来の透析導入につながるかもしれない重要な問題です。私たちは皆さんの腎臓が今どのような状態にあるのかを把握し、一緒に改善していくためのサポートをさせていただきます。

糖尿病性腎症とは?発症のメカニズムと原因
糖尿病性腎症は、血糖値が高い状態が長く続くことで、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。私たちの腎臓には、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出する、小さなフィルターである「糸球体(しきゅうたい)」がたくさんあります。健康な腎臓では、このフィルターが体に必要なタンパク質などを体内に留め、不要なものだけを排出しています。しかし、糖尿病性腎症では、この糸球体がダメージを受けてしまうことで、本来は体に必要なタンパク質が尿に漏れ出たり、老廃物が体に溜まったりするようになります。
病気が発症するメカニズムとして、高血糖は腎臓の細胞に大きな負担をかけます。特に、細胞の中にある「小胞体(しょうほうたい)」という部分に異常なストレスが生じることが、腎臓の細胞の損傷や炎症を引き起こし、病気の進行を加速させることが最近の研究で分かってきています[1]。小胞体とは、細胞の中でタンパク質を組み立てたり、形を整えたりする、いわば「細胞内の工場」のような器官です。この工場が忙しくなりすぎると、エラーを起こし、細胞が正常に働けなくなってしまうのです。
この「小胞体ストレス」が持続すると、糸球体の一部である「ポドサイト」という重要な細胞が傷ついたり、減少したりします。ポドサイトは、糸球体のフィルター機能の維持に不可欠な細胞です。さらに、尿の濃さを調整する「腎尿細管(じんようさいかん)」の機能も低下し、腎臓の中に不必要な線維質の物質が溜まって腎臓が硬くなる「線維化(せんいか)」が進んでいきます[1, 2]。同時に、腎臓の中で炎症が起きたり、体が錆びつく「酸化ストレス」が増えたりすることも、病気を悪化させる大きな要因となります[2]。
これらの複雑なメカニズムが絡み合い、腎臓のろ過機能が徐々に失われていくことが、糖尿病性腎症の主な原因と考えられています。病気が進行すると、体全体のバランスが崩れやすくなるため、早期にこれらの変化を理解し、適切な対策を始めることが大切です。
eGFR・クレアチニン値でわかる腎臓の健康状態
ご自身の腎臓の健康状態を知る上で、血液検査で測定する「eGFR(いーじーえふあーる)」と「クレアチニン値(くれあちにんち)」は非常に重要な指標です。これらは、腎臓がどのくらい血液をろ過できているかを示す数値で、「腎臓の働きを測るものさし」とも言えます。これらの数値は、いわばあなたの腎臓の「通信簿」のようなものです。
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eGFR(推算糸球体ろ過量)
- 性別、年齢、クレアチニン値から計算され、1分間にどのくらいの血液をろ過できるかを表します。
- 健康な方では90mL/分/1.73m²以上が目安です。
- この数値が低いほど、腎臓の機能が低下していることを示します。
- eGFRが60mL/分/1.73m²未満の状態が3か月以上続くと、「慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)」と診断されます。
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クレアチニン値
- 筋肉の活動によって作られる老廃物の一種で、通常は腎臓から尿として排出されます。
- 腎臓の機能が低下すると、このクレアチニンが血液中に溜まりやすくなるため、数値が高くなります。
- この数値は年齢や性別によっても多少変動しますが、男性で1.0mg/dL、女性で0.7mg/dL程度が基準値とされています。
これらの数値を定期的に確認することは、糖尿病性腎症の早期発見と進行度を把握するために欠かせません。もしこれらの数値に異常が見られた場合は、腎臓病の専門医による詳しい診察が必要となりますので、放置せずに私たちと一緒に対応していきましょう。当院では、皆さんの腎臓の健康状態を専門医の視点からしっかりと評価し、きめ細やかなサポートを行います。
糖尿病性腎症の進行で起こる合併症
糖尿病性腎症が進行すると、腎臓の機能が低下するだけでなく、体全体に様々な影響が及び、他の合併症を引き起こすリスクが高まります。腎臓は老廃物の排出だけでなく、体内の水分や塩分の調整、血圧の調整、赤血球を作るホルモンの分泌、骨を強くするビタミンDの活性化など、多くの重要な役割を担っているからです。健康な腎臓が担うこれらの働きが失われると、体の様々な部分で不調が現れます。
主な合併症には以下のようなものがあります。
- むくみ(浮腫)
- 腎臓の機能が低下すると、体内の水分や塩分が適切に排出されなくなります。
- その結果、足や顔、全身にむくみが生じやすくなります。
- 特に足のすねを指で押してへこんだ跡が戻りにくい場合は注意が必要です。
- 高血圧
- 腎臓は血圧を調整するホルモンを分泌しています。
- その機能が低下すると高血圧になりやすくなります。
- 高血圧はさらに腎臓への負担を増やし、病気を悪化させる悪循環を引き起こします。
- タンパク尿の悪化
- 腎臓のフィルター機能がさらに低下すると、尿に漏れ出るタンパク質の量が増えます。
- これにより、泡立つ尿が以前よりも顕著になります。
- これは腎臓のダメージが進行していることを示すサインです。
- 貧血
- 腎臓から分泌される「エリスロポエチン」というホルモンは、赤血球を作る働きを促します。
- 腎機能が低下するとこのホルモンが不足し、貧血になりやすくなります。
- 「疲れやすい」「息切れがする」といった症状で気づくことがあります。
- 心血管疾患
- 糖尿病性腎症の進行は、心臓病や脳卒中などのリスクを大幅に高めます。
- 腎臓と心臓は密接に関連しており、一方の機能が低下するともう一方にも悪影響を及ぼすことが分かっています(心腎連関)。
- 神経障害
- 老廃物が体内に蓄積することで、手足のしびれや痛み、消化器症状など、様々な神経障害が悪化する可能性があります。
- 糖尿病性神経障害も併発している場合は、さらに症状が複雑になることがあります。
これらの合併症は、お互いに影響し合い、連鎖的に悪化する傾向があります。そのため、糖尿病性腎症の早期発見と適切な治療が、合併症を防ぐために非常に重要です。体の些細な変化にも気づき、専門医と協力して対応していくことが、皆さんの健康を守る第一歩となります。
腎臓病と診断されたら受ける精密検査
腎臓病、特に糖尿病性腎症と診断された場合、腎臓の状態をより詳しく把握し、適切な治療方針を立てるために、いくつかの精密検査が行われます。これらの検査を通じて、病気の進行度、原因、そして合併症の有無などを詳細に調べることができます。
代表的な精密検査は以下の通りです。
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尿検査
- 尿タンパク・尿中アルブミン測定
- 尿中に漏れ出るタンパク質(特にアルブミン)の量を調べます。
- 早期の糖尿病性腎症では「微量アルブミン尿(びりょうあるぶみんにょう)」という、ごく少量のアルブミンが検出されることが重要です。
- 早期発見には欠かせない検査です。
- 尿沈渣(にょうちんさ)
- 尿中の赤血球、白血球、細胞などを顕微鏡で観察します。
- 腎臓や尿路の炎症や出血の有無を確認します。
- 尿タンパク・尿中アルブミン測定
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血液検査
- eGFR・クレアチニン値
- 腎臓の機能を示す基本的な指標です。
- 尿素窒素(にょうそちっそ)
- タンパク質の代謝によって生じる老廃物で、腎機能が低下すると高くなります。
- 電解質(でんかいしつ)
- ナトリウム、カリウムなどのバランスを調べ、腎臓による調整機能の異常を確認します。
- 貧血の有無
- ヘモグロビン値などを測定し、腎臓病による貧血の進行度を確認します。
- eGFR・クレアチニン値
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画像検査
- 腎臓のエコー(超音波)検査
- 腎臓の大きさ、形、結石や水腎症(すいじんしょう)の有無などを確認します。
- 放射線被ばくがなく、患者さんの負担が少ない検査です。
- CT/MRI検査
- 必要に応じて、腎臓やその周辺の臓器をさらに詳しく調べるために行われます。
- 腎臓のエコー(超音波)検査
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腎生検(じんせいけん)
- 局所麻酔の後、細い針で腎臓の組織を少量採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。
- 腎臓病の確定診断、原因の特定、病気の活動性や重症度を評価するために有用な検査ですが、患者さんの体の負担を考慮し、専門医が慎重に判断して行われます。
近年、尿や血液中に含まれる「細胞外小胞(さいぼうがいしょうほう)」という、細胞から分泌される小さなカプセルのような物質を分析することで、より早い段階で病気の状態を把握したり、将来の腎臓病の進行を予測したりできる可能性が研究されています[2]。細胞外小胞は、miRNA(マイクロRNA)やタンパク質といった疾患に関連する情報を運び、腎臓の細胞同士のコミュニケーションに影響を与え、病的な変化を促進することが分かっています[2]。これらはまだ研究段階ですが、将来の診断や治療に役立つ新しい手掛かりとして注目されています。私たちは専門医として、これらの検査結果を総合的に判断し、皆さんに合わせた治療計画をご提案します。不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
透析を回避するために今すぐ始める5つの腎臓ケア
「むくみや泡立つ尿といった症状に気づき、もしかしたら腎臓が悪くなっているのではないか」と不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。糖尿病性腎症は、自覚症状がないまま静かに進行し、放置すると人工透析が必要になる場合もあります。人工透析は腎臓の機能がかなり低下した場合に必要となる治療ですが、今から適切なケアを始めることで、その時期を遅らせたり、回避したりできる可能性も十分にあります。大切な腎臓を守るために、今日からでも始められる具体的な5つのケアについて、私たち糖尿病内科専門医と一緒に確認していきましょう。

薬物療法:症状を抑え進行を遅らせる薬の種類
糖尿病性腎症の進行を抑えるためには、適切な薬物療法が不可欠です。私たちは糖尿病専門医として、患者さんの腎臓の状態と全身の健康状態を詳しく評価し、それぞれに合わせたお薬を処方しています。これは、腎臓への負担を減らし、病気の進行を穏やかにすることを目的としています。主な薬の種類とその働きは以下の通りです。
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血圧を下げるお薬(ACE阻害薬、ARB)
- アンジオテンシン変換酵素阻害薬(えーしーいーそがいやく)や
- アンジオテンシンII受容体拮抗薬(えーあーるびー)は、
- 腎臓の中の小さな血管にかかる圧力を下げて、腎臓へのダメージを防ぎます。
- 血圧を適切にコントロールするだけでなく、尿から漏れ出るタンパク質の量を減らす効果も期待できます。
- 腎臓の保護に非常に重要な役割を果たすお薬です。
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血糖値を下げるお薬
- 糖尿病性腎症は、高血糖状態が長く続くことで腎臓にダメージが蓄積して起こります。
- そのため、血糖値を適正な範囲に管理することが、腎臓を守る上で最も基本的な治療となります。
- 飲み薬やインスリン注射など、患者さんの状態に合わせた様々なお薬があります。
- 最近では、SGLT2阻害薬(えすじーえるてぃーつーそがいやく)のように、
- 血糖値を下げる効果だけでなく、腎臓を保護する作用も持っていることが科学的に証明されているお薬も登場しています。
- これらの新しい作用を持つ治療薬は、腎臓病の進行抑制に新たな希望をもたらしています。
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脂質異常症のお薬
- 血液中のコレステロールや中性脂肪が高い状態(脂質異常症)も、
- 腎臓の血管を傷つけ、腎臓病の進行に関わると考えられています。
- スタチンなどのお薬で脂質異常症を治療し、
- 血管全体の健康を保つことも、腎臓を守る上でとても重要です。
また、糖尿病性腎症の患者さんの中には、心房細動(しんぼうさいどう:心臓の上の部屋が不規則に震える不整脈)という不整脈を合併している方も少なくありません。心房細動は脳梗塞などの血栓症(けっせんしょう:血管の中に血の塊ができる病気)のリスクを高めるため、これを防ぐために抗凝固薬(こうぎょうこやく:血液を固まりにくくするお薬)が使われます。これまで主にワルファリンというお薬が使われてきましたが、最近ではDOAC(直接経口抗凝固薬:どあっくりやく)と呼ばれる新しいタイプのお薬が注目されています。
ある研究報告では、慢性腎臓病を合併した心房細動の患者さんにおいて、DOACはワルファリンと比較して、出血や脳卒中のリスクを低下させる可能性が示されています。具体的には、DOACを服用した患者さんでは、出血のリスクが34%(オッズ比[OR]、0.66)、脳卒中のリスクが40%(OR、0.60)それぞれ低くなるというデータも出ています。特に腎臓病のステージが進行している方や、すでに透析を受けている方でも、DOACが有効である傾向があることが分かっています。これらの選択肢について、ご自身の状態に合わせて最適な治療法を一緒に検討していきましょう。自己判断でお薬の服用を中断したり、量を変更したりすることは危険ですので、必ず医師の指示に従い、気になることは遠慮なくご相談ください。
食事療法:腎臓に優しい献立と調理のコツ
腎臓病の治療において、食事は薬と同じくらい大切な役割を担っています。適切な食事療法を行うことで、腎臓への負担を軽減し、病気の進行を遅らせることができるからです。私たちの専門医や栄養士が、皆さんの腎臓を守るための具体的な食事の工夫を一緒に考え、サポートさせていただきます。主なポイントは以下の通りです。
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塩分を控える(減塩)
- 塩分を摂りすぎると、体の中に余分な水分がたまり、むくみや血圧の上昇につながります。
- 血圧が高い状態は腎臓に大きな負担をかけるため、一日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが目標です。
- 調理のコツ: 醤油や味噌などの調味料を控えめにし、代わりにレモン、酢、ショウガ、ワサビ、唐辛子などの香辛料やハーブ、出汁(だし)を上手に活用しましょう。
- 加工食品やインスタント食品、練り物には多くの塩分が含まれているため、できるだけ避けることが大切です。
- 外食時も、薄味を希望したり、汁物を残したりするなどの工夫が有効です。
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タンパク質を摂りすぎない(低タンパク)
- タンパク質が体の中で分解されると、老廃物(ろうはいぶつ)ができます。
- 腎臓の機能が低下していると、この老廃物を十分に排出できなくなり、体に蓄積してしまいます。
- 調理のコツ: 肉や魚、卵、大豆製品などのタンパク質を多く含む食品は、適量を守りましょう。
- 主食のご飯は、低タンパク米に切り替えることも有効な手段の一つです。
- 当院の栄養士と相談しながら、ご自身の腎臓の状態に合わせた適切なタンパク質量を見つけることが重要です。
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カリウムを控える
- カリウムは野菜や果物、海藻類に多く含まれるミネラルですが、
- 腎臓の機能が低下すると、体外への排出が難しくなります。
- 血液中のカリウム濃度が高くなりすぎると、不整脈(ふせいみゃく)などの重篤な症状を引き起こすことがあります。
- 調理のコツ: 野菜は、小さく切ってから水にさらしたり、茹でこぼしたりすることで、カリウムを減らすことができます。
- 果物も種類によってはカリウムが多く含まれるものがあるので、医師や栄養士に確認し、量を調整しましょう。
- 生の野菜よりも加熱調理した方がカリウム摂取量を抑えられます。
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リンを控える
- 加工食品や乳製品、インスタント食品に多く含まれるリンも、
- 腎臓病の進行とともに体内に蓄積しやすくなります。
- リンが高い状態が続くと、骨がもろくなったり、血管が硬くなったりするなどの問題が生じます。
- 加工食品を避け、自然な食材を選ぶように心がけましょう。
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水分やエネルギーの調整
- むくみがひどい場合は、体内の水分量を適切に保つために水分制限が必要になることもあります。
- また、食事量が減ってエネルギー不足にならないよう、
- 適切なカロリーを摂ることも大切です。
- 油を上手に使うなど、エネルギーを確保しつつ腎臓に優しい食事を工夫します。
当院では、栄養士による個別指導も行っていますので、無理なく続けられる献立や調理の工夫を、ぜひ私たちと一緒に考えていきましょう。具体的なメニューの相談から、食事の記録のつけ方まで、きめ細やかにサポートいたします。
運動習慣:サルコペニア予防と腎機能維持のポイント
腎臓病の治療には、食事や薬だけでなく、適切な運動習慣を取り入れることも大切です。運動は、血糖値や血圧のコントロールに役立つだけでなく、腎臓病の進行に伴って起こりやすい合併症の予防にもつながるからです。特に、腎臓病が進行すると筋肉量が減少しやすいことが知られています。これはサルコペニア(さるこぺにあ:加齢や病気などにより筋肉量と筋力が減少し、身体機能が低下する状態)と呼ばれ、転倒のリスクを高めたり、生活の質を低下させたりするだけでなく、長期的な予後(よご:病気の今後の見通し)にも影響を与える可能性があることが分かっています。
「慢性腎臓病患者におけるサルコペニアに関連するリスク因子」に関するあるシステマティックレビューとメタアナリシスでは、糖尿病がサルコペニアの発症リスクを約2倍高めることが示されています(オッズ比=1.96)。これは、糖尿病を抱える患者さんにとって、サルコペニアの予防がいかに重要であるかを裏付けるものです。また、この研究では、定期的な運動習慣が、すでに透析を受けている患者さんにおいてもサルコペニアに対する保護的な因子(体に良い影響を与える要素)として関連していることが報告されています。つまり、腎臓病のどの段階にあっても、運動は筋肉を守り、体力を維持するために非常に有効な手段と言えるのです。
無理なく運動を続けるためのポイントは以下の通りです。
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有酸素運動
- ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなど、
- 体に酸素をたっぷり取り込む運動は、心肺機能を高め、血糖値や血圧の改善に役立ちます。
- 毎日30分程度を目標に、無理のない範囲で、ご自身の体調に合わせて続けましょう。
- 継続が大切ですので、「気持ちいい」と感じる程度の負荷から始めてください。
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筋力トレーニング
- 筋肉量を維持・増加させることは、サルコペニアの予防に直結します。
- スクワットや軽いダンベル体操、ゴムバンドを使った運動など、
- 自宅でもできる簡単な筋力トレーニングを取り入れましょう。
- ただし、過度な負荷は避け、無理のない範囲で行うことが重要です。
- 専門家から正しいフォームを学ぶことで、効果を高め、怪我を防ぐことができます。
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柔軟運動
- ストレッチなどで体の柔軟性を保つことも、
- 運動効果を高め、怪我の予防につながります。
- 運動前後のウォーミングアップやクールダウンに取り入れるようにしましょう。
運動を始める前には、必ず主治医に相談し、ご自身の腎臓の状態や体の状況に合わせた運動メニューを提案してもらうことが大切です。当院では、患者さんの状態に合わせた運動指導も行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
生活習慣の改善:禁煙・飲酒・体重管理が重要な理由
糖尿病性腎症の進行を防ぎ、透析を回避するためには、日々の生活習慣を見直すことが非常に重要です。特に禁煙、飲酒量の管理、そして適正な体重の維持は、腎臓の健康を守る上で欠かせない要素となります。
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禁煙
- たばこに含まれる有害物質は、血管を収縮させ、
- 腎臓への血流を悪くするだけでなく、腎臓の細胞そのものにも直接ダメージを与えます。
- 喫煙は腎臓病の進行を早める大きな要因の一つですので、禁煙は非常に重要です。
- 禁煙は簡単なことではありませんが、一人で抱え込まずに、
- 当院の禁煙外来など専門家のサポートを活用してください。
- 私たちと一緒に、大切な体と健康な腎臓を取り戻しましょう。
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飲酒の管理
- 過度なアルコール摂取は肝臓だけでなく、腎臓にも負担をかけます。
- アルコールは利尿作用(りにょうさよう:尿の量を増やす作用)があるため、
- 脱水状態を引き起こしやすく、腎臓にストレスを与える可能性があります。
- また、アルコール代謝の過程で生じる物質が、腎臓に直接的な悪影響を及ぼすことも指摘されています。
- 腎臓の働きが低下している場合は、飲酒量を控えるか、
- 医師に相談して適切な量を守るようにしましょう。
- 休肝日を設けたり、飲酒量を記録したりするのも良い方法です。
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適正な体重の維持
- 肥満は、糖尿病や高血圧を悪化させる大きな要因となります。
- これらの病気が悪化すると、結果的に腎臓への負担が増大し、
- 糖尿病性腎症の進行を早めてしまいます。
- しかし、単に体重を減らせば良いというわけではありません。
- 近年の研究では、慢性腎臓病患者において、極端な痩せすぎもサルコペニアのリスクを高める可能性が示されています。
- そのため、筋肉量を維持しながら、ご自身にとっての適正な体重を保つことが大切です。
- BMI(Body Mass Index:肥満度を示す国際的な指標)を意識し、
- ご自身の身長に見合った健康的な体重を目指しましょう。
- 無理なダイエットではなく、バランスの取れた食事と適度な運動によって、
- 健康的に体重を管理していくことが、腎臓を守る上で不可欠です。
これらの生活習慣の改善は、決して楽なことばかりではありません。しかし、一つひとつ改善していくことで、大切な腎臓を守り、将来の透析を回避できる可能性が大きく高まります。当院のスタッフ一同、皆さまの健康を全力でサポートさせていただきます。
専門医による定期的な診察と低負担な検査
糖尿病性腎症の進行を食い止め、透析を回避するためには、専門的な知識と経験を持つ医師による継続的な管理と、定期的な検査が不可欠です。症状がない初期段階から、腎臓の状態を把握し、早期に適切な対策を講じることが何よりも大切です。
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専門医によるきめ細やかな診察
- 当院には、糖尿病・甲状腺・内分泌の専門医が複数在籍しており、
- 皆さまの腎臓の状態をきめ細やかに評価し、皆さまに合わせた治療方針をご提案いたします。
- 糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症として発症するため、
- 糖尿病治療の専門家である糖尿病内科医が、腎臓の状態を総合的に診ることが非常に重要です。
- 現在の病状や生活習慣を詳しくお伺いし、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療計画を立てていきましょう。
- 私たちは皆さんの疑問や不安に寄り添い、共に病気と向き合うパートナーでありたいと考えています。
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低負担で継続できる検査
- 腎臓の機能を知るためには、尿検査や血液検査が定期的に必要です。
- 尿中のタンパク質や血液中のクレアチニン、
- eGFR(いーじーえふあーる:腎臓のろ過機能を数値化したもの)などの数値を継続的にチェックすることで、
- 腎臓の健康状態を正確に把握することができます。
- 当院では、採血不要の連続血糖測定器(リブレ)を導入しておりますので、
- 患者さまへの負担を軽減しながら、きめ細やかな血糖管理が可能です。
- 腎臓病の管理には、血糖値の安定が不可欠であり、
- この検査はご自身の血糖変動をより詳細に理解するのに役立ちます。
- 定期的な検査は、病気の早期発見と適切な治療への重要な一歩です。
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早期発見・早期治療の重要性
- 腎臓病は、かなり進行するまで自覚症状が出にくいのが特徴です。
- そのため、「むくみや泡立つ尿がないから大丈夫」と自己判断せずに、
- 定期的に専門医の診察を受け、検査を受けることが透析を回避するための鍵となります。
- 体からの小さなサインを見逃さず、私たち専門医と一緒に、
- 大切な腎臓を守っていきましょう。
- 当院は仙川駅徒歩1分とアクセスも良く、土日診療や夜間19時までの受付、
- 24時間対応の訪問診療も行っておりますので、いつでもお気軽にご相談ください。
まとめ
むくみや泡立つ尿など、体からのサインに気づいた時、それは大切な腎臓が助けを求めている合図かもしれません。腎臓病は静かに進行し、放置すると透析が必要になる場合もありますが、今から適切なケアを始めることで、その時期を遅らせたり、回避したりできる可能性は十分にあります。
薬物療法や食事、運動、生活習慣の見直しに加え、何よりも大切なのは専門医による早期発見と継続的なサポートです。当院では、皆さまの腎臓の健康を全力でサポートいたします。少しでも気になる症状があれば、どうか一人で悩まず、いつでもお気軽にご相談ください。大切な腎臓を守り、健やかな毎日を送りましょう。
参考文献
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