「仕事が忙しくて、つい…」糖尿病の治療から足が遠のいてしまい、うしろめたさや不安を感じていませんか。しかし、治療を中断してしまうのは決してあなただけではありません。大切なのは「もう手遅れかも」と一人で抱え込まず、まずは現在の体の状態を正しく知ることです。
その中断期間中にも、病状は静かに進行している可能性があります。足のしびれや目のかすみといった症状は、放置すれば生活の質を大きく損なう合併症の危険信号です。でも、まだ手遅れではありません。今から適切な治療を再開すれば、進行を食い止め、改善することも十分に可能です。
この記事では、紹介状がなくても安心して治療を再開できる具体的な流れや、あなたの生活に合わせた無理のない治療計画について詳しく解説します。ご自身の未来の健康のために、もう一度、私たちと一緒に第一歩を踏み出してみませんか。
治療中断は特別なことではありません。まずはご自身の状態を知ることから始めましょう
お仕事や家庭の事情で忙しく、糖尿病の治療から足が遠のいてしまった。 そうした状況に、うしろめたさや不安を感じていらっしゃるかもしれません。
しかし、治療を中断してしまうのは、決して特別なことではありません。 大切なのは、「もう手遅れかも」と一人で抱え込まず、まず今の体の状態を正しく知ることです。 糖尿病は自覚症状がないまま静かに進行しますが、適切な治療を再開すれば、合併症の進行を食い止め、改善することも十分に可能です。
私たちと一緒に、ご自身の未来の健康のために、もう一度治療への一歩を踏み出しましょう。

糖尿病治療を中断してしまう、よくある3つの理由
治療の継続が難しくなる背景には、患者さん一人ひとりの様々な事情があります。 ご自身にも当てはまるものがないか、一度振り返ってみましょう。
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症状が安定したことによる自己判断 「血糖値が正常範囲になったから大丈夫」「最近、体調が良いから薬はもういらないだろう」 このように感じて、ご自身の判断で治療をやめてしまうケースは少なくありません。 しかし、この自己判断が、実は最も危険な落とし穴です。 糖尿病は、お薬や生活習慣の改善によって血糖値が「コントロールされている状態」であり、「完治」したわけではありません。 近年では優れた効果を持つ治療薬も増えていますが、その効果はあくまで服用を続けているからこそ得られるものです。 実際に、効果の高い治療薬であっても使用を中止すれば、再び病状が悪化するリスクがあることが研究でも指摘されています。
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仕事や家庭の事情による多忙 「プロジェクトが佳境で、通院の時間がどうしても作れない」 「子育てや親の介護で、自分の健康は後回しになっている」 このような日々の生活に追われる状況も、治療中断の大きな理由です。 ご自身の健康を後回しにしがちな状況は、私たちがしっかりとサポートしますのでご安心ください。
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治療に対するさまざまな負担感 治療を続ける上で、心身や経済的な負担が中断のきっかけになることもあります。
- 経済的な負担: 毎月の診察代や薬代が家計の負担に感じられる。
- 精神的な負担: 食事制限や運動療法がストレスになり、続けるのが辛い。
- 身体的な負担: 薬の副作用(低血糖、胃腸症状など)がつらい、あるいは不安に感じる。
これらの理由は、どなたにでも起こりうることです。 大切なのは、一人で悩まず、医療機関に相談することです。
「医師に怒られるのでは」というご不安は不要です
「治療を中断したことを話したら、厳しく叱られるのではないか…」 そのご不安から、クリニックの扉を開けるのをためらってしまうお気持ちは、よく分かります。
どうぞ、ご安心ください。 私たちは、再びご自身の健康と向き合おうと決心し、来院してくださったあなたの勇気を心から尊重します。
私たちが知りたいのは、中断したことを責めるための理由ではありません。 むしろ、あなたが「なぜ治療を続けるのが難しかったのか」を正直に教えていただくことが、今後の治療計画を立てる上で、大切な手がかりになります。
- 多忙で時間がなかった方には: 通院頻度の調整など、生活スタイルに合わせた方法を一緒に探します。
- 食事療法が辛かった方には: 管理栄養士も交え、より実践しやすく、ストレスの少ない食事の工夫を考えます。
- 副作用が心配だった方には: お薬の種類を見直したり、副作用を和らげる方法を探したりします。
中断期間中の生活のこと、感じていた不安など、どんな些細なことでもお話しください。 私たちはあなたの味方であり、病気と向き合うパートナーです。
これって合併症?体からの危険信号セルフチェックリスト
糖尿病で特に注意すべきなのは、自覚症状がないまま進行する「合併症」です。 治療を中断している間に、お身体が危険信号を発しているかもしれません。 以下のリストで、ご自身の状態を確認してみましょう。一つでも当てはまる場合は、お早めにご相談ください。
| 分類 | チェック項目 |
|---|---|
| 神経障害のサイン | ☐ 足の裏や指先がジンジン、ピリピリとしびれる ☐ 足の裏に一枚紙が貼られたような違和感がある ☐ 手足の感覚が鈍い(熱さや冷たさを感じにくい) ☐ こむら返りが頻繁に起こる ☐ 立ちくらみや、めまいがする ☐ 便秘や下痢を繰り返すようになった |
| 網膜症のサイン | ☐ 目がかすむ、視界がぼやけて見える ☐ 視力が以前より落ちたと感じる ☐ 虫や黒い点のようなものが飛んで見える(飛蚊症) |
| 腎症のサイン | ☐ 尿が泡立つ状態が続く(初期は無症状です) ☐ 顔や足がむくみやすい ☐ 体がだるい、疲れやすさが抜けない |
| 足のトラブルのサイン (閉塞性動脈硬化症など) |
☐ 足が冷たい、色が悪い(白っぽい、紫色など) ☐ 少し歩くと足が痛くなり、休むと治ることを繰り返す ☐ 足にできた傷や靴擦れがなかなか治らない |
これらの症状は、糖尿病の三大合併症(神経障害、網膜症、腎症)や、足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症(PAD)のサインである可能性があります。 早期発見・早期治療が、将来の生活の質(QOL)を守るために非常に重要です。
現状把握が第一歩。紹介状なしの初診で行う検査とは
治療を再開するにあたり、まず大切なのは「現在の体の状態を正確に把握すること」です。 以前の病院からの紹介状(診療情報提供書)がなくても、全く問題ありません。
初診時には、主に以下のような検査を行い、糖尿病の状態と合併症の進行度を詳しく調べます。
- 問診: 治療の中断期間、その間の食生活や運動習慣、自覚症状など、今後の治療方針を決めるための大切なお話を伺います。
- 身体測定: 身長、体重から肥満度(BMI)を算出し、血圧を測定します。これらは生活習慣病管理の基本情報となります。
- 血液検査:
- 血糖値: 採血した時点での血液中のブドウ糖の濃度です。
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー): 過去1〜2ヶ月間の血糖コントロール状態の平均点がわかる、重要な指標です。「血糖値の通信簿」とも言えます。
- 脂質・肝機能・腎機能: 動脈硬化のリスクや、お薬の選択に欠かせない肝臓や腎臓の状態を確認します。
- 尿検査:
- 尿糖: 血糖値が高い場合に、尿中に糖が漏れ出ていないかを調べます。
- 尿蛋白・尿中アルブミン: 糖尿病腎症という合併症のごく初期のサインを見つけるための非常に大切な検査です。
これらの検査は、今後の治療方針を決めるための「健康の羅針盤」です。 ご自身の未来の健康を守るための大切な第一歩ですので、安心して受けていただければと思います。
紹介状なしでも大丈夫。治療再開までの具体的な流れと費用
糖尿病の治療を中断してしまい、「また病院に行きたいけれど、どうすれば…」と一歩を踏み出せずにいる方もいらっしゃるかもしれません。
どうぞご安心ください。治療の再開に、以前の病院からの紹介状(診療情報提供書)は必ずしも必要ありません。 大切なのは、「もう一度治療を始めよう」と決意された、そのお気持ちです。
ここでは、治療を再開する際の具体的な流れや費用について、分かりやすくご説明します。 私たちと一緒に、健康な未来への一歩を踏み出しましょう。

ステップ1:ご予約から問診までのスムーズな手順
治療再開の第一歩は、クリニックへのご予約です。 お電話やウェブサイトの予約フォームから簡単にご予約いただけます。
その際に「糖尿病治療の再開を希望している」とお伝えいただくと、当日、よりスムーズにご案内できます。
ご来院時にお持ちいただきたいもの
- マイナンバーカード: 保険診療を受ける上で必要となります。代わりに資格確認証もご利用いただけます。
- お薬手帳: 以前の治療内容を把握し、あなたに合う薬を考える上で非常に重要な情報となります。
- 過去の健康診断や人間ドックの結果: あればで構いません。数値の推移を見ることで、病状の変化をより正確に把握できます。
クリニックに到着したら、まず問診票にご記入いただきます。 治療を中断してしまったことへの気まずさを感じる必要はまったくありません。 分かる範囲で正直にご記入いただくことが、あなたに合った治療計画を立てるための何より大切な情報になります。
ステップ2:初診当日の検査内容と所要時間の目安
治療を再開するにあたり、まず現在の体の状態を正確に把握することが何よりも重要です。 中断している間に合併症が始まっていないか、どの程度進行しているかなどを調べるため、いくつかの検査を行います。
初診時に行う主な検査
| 検査の種類 | 内容 | わかること |
|---|---|---|
| 問診・診察 | 自覚症状や生活習慣について詳しく伺います | 全体的な健康状態と、今後の治療方針を決めるための情報を得ます |
| 身体測定 | 身長、体重、血圧、腹囲などを測定します | 生活習慣病管理の基本となる肥満度や血圧の状態を把握します |
| 血液検査 | 血糖値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)などを調べます | 直近の血糖値や、過去1〜2ヶ月の血糖コントロール状態の平均点がわかります |
| 尿検査 | 尿中の糖やタンパク質(アルブミン)を調べます | 腎臓への負担やダメージの有無を調べ、糖尿病腎症の早期発見に繋げます |
これらの基本的な検査に加え、合併症の疑いがあれば心電図検査や、足の血流を調べるABI検査(足と腕の血圧を比較する検査)などを行うこともあります。
受付から診察、検査、お会計までの所要時間は、全体で1時間半から2時間程度が目安です。 当日に結果がわかる検査については、医師から直接ご説明いたします。
ステップ3:医師に正直に伝えてほしい3つのこと(中断期間・食生活・自覚症状)
診察の際には、あなたの状態を正しく理解し、あなたに合った治療法を一緒に見つけるために、ぜひ以下の3つを教えてください。
私たちはあなたを責めたりしません。 むしろ正直にお話しいただくことが、より良い治療計画を立てるための大切な一歩になります。
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治療を中断していた期間 どのくらいの期間、治療から離れていたかを教えてください。 期間の長さに応じて、病状がどの程度進行している可能性があるかを推測し、必要な検査計画を立てるための参考にします。
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中断期間中の食生活や運動習慣 「不摂生をしていたから話しづらい」と感じるかもしれません。 ありのままの生活状況をお聞かせください。 これは厳しい食事制限を課すためではなく、あなたのライフスタイルの中で、無理なく続けられる改善点を一緒に見つけるための大切な情報です。
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気になる自覚症状 目のかすみ、手足のしびれ、頻尿、だるさなど、どんな些細なことでも構いません。 「年のせいかな?」と思うようなことでも、実は糖尿病の合併症のサインである可能性があります。 気になることはすべてお話しください。
健康保険は使える?治療再開にかかる費用の内訳
糖尿病の治療は、もちろん健康保険が適用されますのでご安心ください。 治療を再開する際の初診時にかかる費用は、検査内容によって多少異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
初診時の費用目安(3割負担の場合)
| 項目 | 費用(目安) |
|---|---|
| 初診料+検査料 | 3,000円〜5,000円程度 |
| お薬代(院外処方) | 1,500円〜4,000円程度 |
| 合計 | 4,500円〜9,000円程度 |
※上記はあくまで目安です。検査項目や処方される薬の種類によって変動します。
近年、GLP-1受容体作動薬のように、血糖コントロールだけでなく体重減少や心血管疾患のリスク低下が期待できる新しい治療選択肢も増えています。 しかし、このような優れた薬剤も自己判断で中断してしまうと、その効果が失われ、かえって病状を悪化させてしまう危険性があります。
継続的な治療は、長期的に見て合併症を防ぎ、結果的に将来の医療費を抑えることにも繋がります。 費用に関してご心配な点があれば、遠慮なくご相談ください。利用できる公的な制度なども含め、一緒に考えていきましょう。
もう中断しないために。あなたの生活に合わせた無理のない治療計画をご提案します
治療を中断してしまったことに、ご自身を責めていらっしゃるかもしれません。 しかし、お仕事やご家庭の事情で通院が難しくなるのは、決して特別なことではありません。
大切なのは、「もう一度治療を始めよう」と決意された、そのお気持ちです。 私たちは、中断の事実を責めることはありません。 むしろ、再びご自身の身体と向き合おうとされているあなたの勇気を心から尊重します。
これからの治療は、画一的なものではなく、あなたの生活リズムや価値観に合わせた「オーダーメイド」の治療です。 なぜ通院が難しかったのか、どんなことに負担を感じていたのか、ぜひ私たちにお聞かせください。 そこから、あなたにとって無理なく続けられる治療計画を一緒に考えていきましょう。

「頑張りすぎない」が継続のコツ。食事と運動の始め方
「また厳しい食事制限や運動を始めなければ」と気負う必要は全くありません。 糖尿病治療における生活習慣改善の秘訣は、「完璧を目指さないこと」そして「継続すること」です。 まずは、今日からできそうなことから、一つずつ試してみませんか。
食事:まずは「ちょい足し」「順番変え」から
| ステップ | 具体的なアクション例 | ポイント |
|---|---|---|
| Step 1 | 食事の最初に野菜やきのこ、海藻のおかずを食べる | 食物繊維が糖の吸収を緩やかにし、食後の血糖値の急上昇を抑えます(ベジファースト)。 |
| Step 2 | 甘い飲み物(ジュースや加糖コーヒー)を水やお茶に変える | 液体に含まれる糖分は吸収が速く血糖値を上げやすいため、飲み物を変えるだけでも大きな効果があります。 |
| Step 3 | 夕食のご飯の量を、いつもの3分の2にしてみる | 無理に「抜く」のではなく「少し減らす」ことから始め、慣れてきたら半分にするなど段階的に調整します。 |
| Step 4 | コンビニ食は「単品」でなく「定食」をイメージして選ぶ | おにぎりやパンだけでなく、サラダやゆで卵、味噌汁などを組み合わせることで栄養バランスが整います。 |
運動:「ついで」にできることから始める
「運動」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、日常生活の中で少し体を動かす意識を持つだけで立派な運動療法になります。
- エレベーターやエスカレーターを、階段に変えてみる
- 通勤時に一駅手前で降りて、歩く時間を5〜10分増やす
- テレビを見ながら、CMの間だけその場で足踏みをする
- 歯磨きをしながら、かかとの上げ下ろし運動をする
小さな成功体験を積み重ねることが、自信と継続への意欲に繋がります。
新しい治療薬で生活の質(QOL)を保つという選択肢
糖尿病の薬物療法は、この10年で目覚ましい進歩を遂げました。 かつては血糖値を下げることだけが主な目的でしたが、現在では生活の質(QOL)を保ちながら、より良い効果が期待できるお薬が登場しています。
特に近年、治療の選択肢を大きく広げたのがGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬です。
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GLP-1受容体作動薬 血糖値が高い時だけインスリン分泌を促すため、単独使用では低血糖のリスクが低いのが特徴です。 さらに、脳や胃に働きかけて自然に食欲を抑え、体重減少をサポートする効果も期待できます。 肥満は2型糖尿病の大きな要因であり、この薬剤は心臓や血管を守る効果も報告されているため、重要な治療選択肢の一つです。
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SGLT2阻害薬 腎臓で糖が再吸収されるのを抑え、余分な糖を尿と一緒に体外へ排出させることで血糖値を下げます。 このお薬にも、体重減少効果や、心臓・腎臓を保護する効果が認められています。
これらの新しいお薬は、週に1回の注射や、飲み薬のタイプもあり、毎日の服薬が難しい方でも治療を継続しやすくなっています。
ただし、ここで非常に重要な注意点があります。 これらの優れた薬剤も、自己判断で中断してしまうと、その効果は失われてしまいます。 特にGLP-1受容体作動薬は、減量が達成されると安心して服用をやめてしまう方がいますが、海外の研究では、使用を中止すると体重がリバウンドし、血糖コントロールも再び悪化するリスクが指摘されています。
お薬の効果は、あくまで継続して使用することで得られるものです。 どのようなお薬がご自身の状態やライフスタイルに合っているか、ぜひ私たち専門医にご相談ください。
まとめ
この記事では、様々な事情で糖尿病の治療を中断してしまった方へ向けて、治療再開の方法についてご紹介しました。
お仕事や家庭のことで忙しく、ご自身の健康を後回しにしてしまうのは、決して特別なことではありません。「今さら行きづらい」「きっと医師に怒られる」と一人で抱え込まず、まずはその不安な気持ちをお聞かせください。
以前の紹介状がなくても、治療はいつでも再開できます。私たちはあなたを責めるのではなく、オンライン診療や新しい治療薬なども活用しながら、あなたの生活に合わせた無理のない治療計画を一緒に考えます。大切な未来の健康のために、もう一度、私たちと一緒に一歩を踏み出してみませんか。
参考文献
- Salerno ENM, Fumarulo I, Garramone B, Vaccarella M, Ierardi C, Burzotta F, Aspromonte N. GLP1-RAs: long-term use versus discontinuation events of an emerging therapy for obesity and cardiovascular diseases. Current problems in cardiology 51, no. 2 (2026): 103213.


